岩隈がイチローに宣戦布告した。ポスティングシステム(入札制度)で大リーグ移籍を目指す楽天岩隈久志投手(29)が9日、マリナーズ・イチロー外野手(37)との対戦を心待ちにした。この日の未明、30日間の独占交渉権を獲得した球団がアスレチックスであることが大リーグ機構から発表された。交渉は長期化が予想されるが、マリナーズと同じア・リーグ西地区で、先発としてマウンドに上がる目標も掲げた。

 柔らかい、晴れやかな笑顔だった。入団交渉先はアスレチックスに決まった。Kスタ宮城でトレーニングを終えると、岩隈の第一声は「うれしく思います」。落札球団が公になるまで、コメントは控えめだった。ようやく飛び出た喜びの声。夢の実現へ、また1歩、前進した。

 意外な結果ではあった。アスレチックスの印象を聞かれ「あまりよく分かりません」。候補としてマリナーズやヤンキースなどが報じられたが、独占交渉権を得たのはア軍だった。地元メディアによると約1700万ドル(約13億6000万円)で入札し、ミネソタの地元紙スター・トリビューン電子版によると2位の入札額はツインズで1000万~1500万ドルの間だったという。岩隈は「新聞でも出てこなかった球団なので、びっくりしました。でも、興味は持ってくるだろうし、これからのことだけど、少しずつ調べていけたらいい」と気持ちは前を向いている。

 びっくりしても「あの人」のイメージは持っていた。アスレチックスはマリナーズと同じア・リーグ西地区。移籍すれば、たびたびイチローと戦うことになる。「世界のイチローさんと対戦できるのは、うれしい。日米野球ではあったけど日本(の公式戦)では対戦してないので」と声のトーンが上がった。岩隈がプロ入りした00年はイチローの日本最終年だったが、2軍暮らしで対戦はなし。02年の日米野球で初めて顔を合わせ、4打席すべて抑えたが、ついに公式戦での対決が見えてきた。

 ただ、乗り越えるハードルが、いくつかある。岩隈の今季推定年俸は3億円。資金に乏しいといわれるア軍と折り合えるのか。また、同行予定の家族を思い「(住環境に)こだわりがある」。さらに、好投手がそろうア軍で先発の座を確立できるのか。それでも「どういう評価をされるのか分からないけど、先発でいきたい」と言い切った。

 交渉リミットは日本時間の来月7日午後2時。やり手で知られるビーンGMが相手だが、岩隈の代理人、団野村氏も野茂、伊良部ら数々の日本人選手の代理人を務めてきた。らつ腕に期待がかかる。岩隈は「代理人と話し合って方針を決めていきたい。楽天球団には感謝しています」と締めくくった。感謝を胸に、メジャーの先発マウンドでイチロー切り。難交渉も予想されるが、岩隈の大志が道を切り開く。【古川真弥】