【ミネアポリス(米ミネソタ州)15日(日本時間16日)=佐藤直子通信員】メジャーでしぶとく生き残れ-。1994年に巨人でプレーし、現在はツインズ専属のラジオ解説者を務めるダン・グラッデン氏(54)が、レンジャーズのダルビッシュ有投手(25)に、異国で敬意を勝ち取るすべをアドバイスした。

 現役時代は闘争本能むき出しで、「戦う男」として名をはせたグラッデン氏は、87年、91年にツ軍が世界一を勝ち取った時の主力メンバーだ。94年に来日して巨人入り。同年5月11日のヤクルト戦で、死球による両軍の報復合戦が続く中、西村龍次が投じた内角球に激怒し、大乱闘を引き起こした経歴を持つ。この一件をきっかけに「チームメートとの絆が深まった」と振り返る。日米の野球を知る男が、ダルビッシュが敬意を勝ち取るための3つの心得を挙げた。

 ◆その1=打者の内角を恐れずに攻めろ

 「初対戦の時は、相手の手の内を探り合うものだ。この時、打者にナメられずに優位に立つため、内角球を意識付けることが大切だ。打者との心理戦で、まずは先手を打つことがポイントなんだ」

 ◆その2=毅然(きぜん)とした態度でマウンドに立て

 「内角を攻める時は、死球はつきものだ。日本では死球を当てた場合、帽子のつばに手を添えて打者に謝る投手が多いが、メジャーは違うんだ。謝った方が負け。死球を与えたとしても、ソーリー(ごめん)と謝らずに、毅然とマウンドに立ち続けろ、と言いたい。死球を与えても、内角攻めを続ける度胸が必要だ」

 ◆その3=チーム、選手間のライバル関係を知る

 「チームメートが死球を受けた時、場合によっては投手に“報復”を求められることがある。状況を正しく判断するためにも、チームや選手間のライバル関係を予習することが大切だ。オレも、当時のヤクルト野村監督と巨人長嶋監督の現役時代からの関係を、通訳やチームメートから伝え聞いていたんだ。監督や仲間のために一肌脱げる男は、間違いなくチーム内での敬意を勝ち取ることができる」

 グラッデン流サバイバル方法を心掛ければ、ダルビッシュも仲間から尊敬される立派なメジャーリーガーとして生き残れるはずだ。

 ◆ダン・グラッデン

 1957年7月7日生まれ、米カリフォルニア州出身。カリフォルニア州立大フレズノ校から79年にジャイアンツ入団。ツインズ-タイガースと渡り歩き大リーグ通算1197試合で74本塁打、打率2割7分。ツインズでは87、91年のワールドシリーズ制覇に貢献。94年に1年だけ長嶋監督の巨人で外野手として主に1番打者で98試合、15本塁打、37打点、打率2割6分7厘。西武を下し日本一となったが退団しそのまま引退。ツインズ、ロッキーズのスカウトや、ツインズのコーチなどを経て現在はラジオ解説者。

 ◆94年の乱闘

 5月11日のヤクルト-巨人戦(神宮)は「死球合戦」となり、2回ヤクルト西村の投球が巨人村田真の頭部を直撃。3回には巨人木田が西村のでん部にぶつけた。7回、西村の危険球に激怒したグラッデンはマウンドへ向かおうとし、制止しようとした中西捕手に右アッパーを見舞うなど殴り合いに。両軍入り乱れて大乱闘となった。グラッデンは左手小指、右手親指を骨折。中西も顔面を骨折した。西村、グラッデン、中西の3人が退場処分となり、グラッデンは制裁金10万円と12日間の出場停止処分を受けた。