<レイズ2-7ホワイトソックス>◇29日(日本時間30日)◇トロピカーナフィールド

 【セントピーターズバーグ(米フロリダ州)=四竃衛】これこそゴジラの逆襲だ。メジャーに緊急昇格したレイズ松井秀喜外野手(37)が、合流初戦で今季1号となる2ラン。「6番左翼」でスタメン出場し、4回の第2打席に右翼席中段へ豪快に運んだ。慌ただしく大移動しての「駆け付け1発」。オフは契約先が決まらず、開幕後のマイナー契約からはい上がった。新背番号35の初アーチで、野球人生の新たな第1歩を刻んだ。

 実感は、じわりと湧いてきた。初めてレイズのユニホームに身を包み、新背番号35でダイヤモンドを1周しても、松井は表情ひとつ変えなかった。メジャー昇格初戦で、松井らしい、豪快な1発。4回2死一塁、初球だった。4月に完全試合を達成した右腕ハンバーの145キロ直球を迷わず振り抜いた。「良かったですね」。はしゃぐこともなければ、胸を張ることもない。ただ、大記録や劇的なサヨナラ弾とは異なる達成感と静かな喜びは、陳腐な言葉や理屈では説明のしようがなかった。

 期する思いは、格別だった。前夜、インディアナポリスでのマイナー戦後、緊急昇格を告げられ、ヒゲをそる間もなく、フロリダへ移動した。3Aでは打率1割7分と、納得できる状態で昇格したわけではない。だが、所属先が決まらなかったオフ以降、常に視線の先にあったのがメジャーの舞台。キャンプに参加しなかった調整不足の不安も、マイナーでの長旅の疲れも、慣れ親しんだメジャー特有の緊張感が消し去った。「あったのかもしれないですね。特別に何かを意識したということはないですけどね」。

 レ軍のチームメートに粋なサプライズ企画で出迎えを受けた。試合前、日米合同の記者会見を終えてクラブハウスに戻ると、室内は暗闇に包まれていた。その直後に照明がともった瞬間、ミラーボールが回り始め、同僚から一斉に取り囲まれると、力強く抱擁を交わした。「野球場のロッカーとは思えないぐらいでした。みんなが歓迎してくれてうれしかったです」。チーム最年長となる松井を尊敬し、同時にリラックスさせようという心遣いが、何よりもうれしかった。

 背番号も35に変えての再出発。「いろいろと考えましたが、一番の理由は師匠の番号を1つ頂いたことです」。そもそも「師匠」と表現することすら珍しく、巨人長嶋茂雄終身名誉監督の3を片側に背負う決意は、並大抵ではない。それほど、心機一転、原点回帰への思いは強かった。

 だからこそ、背番号55で日米通算505本塁打を積み重ねてきても、35での初アーチの感触は忘れがたいものだった。「そうなるのかもしれないですけどね。どうかな?」。これまで苦悩や不安を一切見せることはなかったが、しばし感慨にふけるほど、思いの詰まったひと振りだった。