<ア地区シリーズ:ヤンキース3-2オリオールズ>◇第3戦◇10日(日本時間11日)◇ヤンキースタジアム

 ヤンキース(東地区1位)が、オリオールズ(ワイルドカード)に劇的なサヨナラ勝ちを収め、リーグ優勝決定戦に王手をかけた。1点を追う9回裏、代打ラウル・イバネス外野手(40)のソロ本塁打で追いつき、12回裏に再びイバネスがサヨナラ弾を放った。イチロー外野手(38)は5打数無安打に終わったものの、「ゲームの世界」と興奮気味だった。第4戦は11日(同12日)、ヤ軍ヒューズ、オ軍ソーンダースの両先発で行われる。

 幾多の試合や修羅場を経験してきても、ここまで劇的な結末だけはイメージできなかった。12回裏のサヨナラ劇。ホーム付近で抱き合うチームメートの輪に、ダッグアウトにいたイチローも足早に向かった。「なんか、ゲームの世界だった、そんな感じですね。考えはするけど、なかなかそうはなりませんからね」。プレーオフならではの空気の中、歓喜に酔うよりも、呆気(あっけ)に取られるような表情だった。

 1-2で迎えた9回裏。先頭のイチローが凡退した直後、不振続きだった3番ロドリゲスに、代打イバネスが送られた。通算647本塁打の現役最多記録を持ちながら、凡退するたびに本拠地でもブーイングが出始めた主砲に、ヤ軍ジラルディ監督は厳しい策を講じた。「胃袋の中から、やりたいことをやるべきだと伝えられたんだ」。1歩間違えれば、打線が崩壊しかねない大胆策だった。だが、起用されたイバネスが同点弾。さらに12回裏には2打席連続となるサヨナラ弾を放ち、窮地を救った。

 敗色濃厚の終盤から驚異的な粘り腰で白星をつかんだ展開に、試合後のイチローも、しばし興奮を隠せなかった。「この国ではいろいろなことが起こるよね。電車は止まるしね。あんなこと言うもんじゃないと思ってましたけど、言って良かったと思いました」。8日に敵地ボルティモアで敗れた試合後の深夜、本拠地ニューヨークへ戻る貸し切り電車が、電気系統の故障でストップ。急きょバスで移動するハプニングに見舞われた。ちょうどその日の試合前、「いろんなことが起こる」と話していた。予期できない好結果に、イチローの声も弾んだ。

 しかも、殊勲のイバネスは、イチローにとって掛け替えのない親友のひとりでもあった。マリナーズ時代の04年から5年間、ロッカーが隣同士で、日本語のジョークを教える間柄だった。09年、当時フィリーズに在籍していたイバネスが、37歳にして初めて球宴に出場した際には、お祝いに高級シャンパンを贈った。4年ぶりに同僚となったヤ軍でもロッカーは隣。「本当にいいヤツで希有(けう)なタイプ。今日はラウルにフォーカスしたらいいじゃないですか」。

 イチロー自らは、5打数無安打で01年以来のプレーオフ12試合連続出塁は止まった。だが、個人の成績を問う必要がないのが、プレーオフ。「ゲームの世界」のような幕切れの余韻を味わうイチローに、充実感が漂っていた。【四竈衛】