お別れのあいさつは、ナカジ流のウイットに富んだものだった。西武から海外FA権を行使し、アスレチックスに移籍する中島裕之内野手(30)が21日、埼玉・所沢の球団事務所で会見した。冒頭で12年間在籍した球団、スタッフ、ファンへの感謝を伝えた後、公の場では沈黙を貫いてきたことを陳謝。米国生活での条件に、お風呂のしっかりした物件を挙げるなど“ヒロ”ワールド全開の会見となった。

 会見の席に座った中島は大勢の報道陣を見渡し「なんか、緊張しますね」と照れ、ニッコリ笑った。和やかな雰囲気に包まれる中、会見の冒頭、自らの口で思いの丈を語った。

 中島

 今年は無事にチームが決まって、向こうで入団会見をして、帰ってくることができました。12年間、西武ライオンズでやらせてもらって、いろいろとサポートしてくださった監督、コーチ、スタッフ、ファンのみなさんに感謝したいです。

 昨年はポスティング移籍でのメジャー挑戦を目指したが、独占交渉権を得たヤンキースと決裂。帰国後は複雑な表情を浮かべながらの会見となったが、この日は笑顔全開の「ヒロワールド」だった。

 周囲への感謝を伝える会見のはずだったが、“謝罪”も忘れなかった。「オフの間はしゃべらんかったんで、記者のみなさん、すみませんでした」。本心ではしゃべりたかったが、FAは情報戦も重要な要素。沈黙を貫くことは苦渋の選択だった。

 アスレチックスの入団会見で爆笑を誘った「セクシー&クール」発言のセンスを存分に発揮した。対戦したい相手を聞かれ「ダルビッシュって言うたら、いいんですか」とニヤリ。「日本のみなさんが楽しみにしてくれるんやったら、僕もダルビッシュとやるのが楽しみ」と笑顔で返した。米国生活での条件に「お風呂が心配。ちゃんとしたお風呂があるところを探さないと」と挙げ、笑わせた。

 報道陣が用意したくす玉を3回連続で割るフリを見せ、カメラマンがシャッターを切る度に爆笑。完璧な演出で締めたかに見えたが、会見後に「あれをやれば良かった。やってもうた」と吐露。「あれ」とは、入団会見で披露した「ハイ!

 オークランド」をアレンジした「ハイ!

 所沢」だった。「ほんまはもっと楽しませようと思ったのになぁ…」。いたずらっぽく笑う姿は、本物のエンターテイナーだった。【久保賢吾】