ロッテ涌井秀章投手(28)は公約を果たす。6安打1失点で9回を投げきり、西武時代の13年4月11日のロッテ戦(QVCマリン)以来、2年ぶりとなる完投勝利を挙げた。昨年最後の登板時に、お立ち台からファンに「QVCマリンでは全部勝つ」と宣言したが、まずは初戦で約束を守った。わずか105球。開幕から2連勝だ。

 表情を変えずに投げ続けた涌井は、最後の投ゴロを処理すると、ふう~っと長い息を吐いた。8回まで4安打85球。「9回も、あっさり3人で終われたら、うれしかったんですけど、ピンチをつくって、またか! って思いの方が強かった」。喜びよりも先に反省が口をついた。

 「調子が良くなかった」と、直球の走りに自信を持てないまま投げていた。それでも9回に145キロを記録するなど、最後まで球威は落ちなかった。交流戦までに1勝3敗と苦しんだ昨年とは別人のようなシーズンの滑り出し。それはキャンプで取り組んできたことの成果かも知れない。

 昨年の前半は直球のシュート回転が直らなかった。体が横振りとなって他の球種の変化にも影響が出た。その反省から、2月のキャンプのブルペンではシュートとチェンジアップを封印した。1カ月かけて、直球の質を高めてきた。開幕のソフトバンク戦も、この日の楽天戦も、左打者の内角にきれいな回転の直球を投げ込んだ。本人が物足りなさを感じる出来でも、打者と勝負できる球質だった。

 エースになろうという自覚が、チーム内での振る舞いも変えさせた。イニング間に捕手の田村と配球についての話をするようになった。「今まではイニング間は全然しゃべらなかったけど、捕手が若いのでね。教えることで、自分の見えなかったものが見えてくることもあるし」。チームを強くするため、以前よりも積極的になった。

 お立ち台では「去年の最後の登板で勝った時に、来年は全部勝ちますって言ったので、とりあえず1つ勝って良かったです」と言った。本拠地登板は14試合ほどが予想されるが、公約を果たすつもり。105球の省エネ完投劇は、その序章にすぎない。【竹内智信】

 ▼涌井の完投勝利、無四死球完投はともに西武時代の13年4月11日ロッテ戦以来で、昨年のロッテ移籍後は初めて。投球105球は、9回完投試合では11年6月1日巨人戦の102球に次いで自身2番目の少なさだった。昨季の涌井はQVCマリンで開幕から12試合連続で勝ち星がなく(0勝6敗)、13試合目の9月28日オリックス戦でようやく勝利を挙げたが、今季は本拠地初登板で勝った。