西武菊池雄星投手(23)が今季5度目の先発で初勝利。通算5戦4勝負けなしの阪神キラーぶりで、交流戦開幕4連勝の虎の進撃を止めた。

 プロで未体験の球数を超えても、菊池の快速球はうなっていた。序盤に152キロの直球は7回も140キロ終盤をマーク。プロ最多となる153球を投げ、7回2失点、11奪三振で今季初勝利を手にした。「みなさんにストレスを与えて申し訳ない。でもなかなか勝てなかったのでホッとした」と素直な思いだった。

 日本屈指の左腕になれる可能性を秘め、6年目を迎えた。昨秋、新任の土肥投手コーチに1本の動画を提示された。世界最速169キロを誇るチャプマン(レッズ)の動作解析。ノーラン・ライアンやランディ・ジョンソンを指導したトム・ハウス氏による解説で3点が快速球の原理だった。

 (1)ストライド(歩幅)の大きさ 平均的な投手は、身長の87%。だがチャプマンは身長193センチの120%の226センチ。ただ大きいのではなく、平均的な投手よりも15%も速い0・8秒で踏み出している。

 (2)ショルダーターン(可動域)の広さ ジョンソンは左肩を60度の角度でテークバックに入れるが、チャプマンは65度。広い可動域が強い反動を生む。

 (3)腕の振りの速さ(テークバックからリリースまで) 平均的な投手は0・07~0・09秒だがチャプマンは0・035秒で振り抜く。リリースも通常は踏み込んだ足と同じ位置だが、チャプマンは右足よりもさらに30・5センチ前。ハウス氏は「1足分で約5キロ、体感速度が増す。彼はこの地球上で最も速い球を投げる生物だろう」と説いている。

 土肥コーチは「お前なら160キロも本当に夢じゃない」と菊池に言い渡した。ストライドは190センチと184センチの身長を上回り、肩甲骨の可動域が広く、腕の振りの速さと3要素を兼ね備えている。菊池は「球が速くなる原理は一緒」と再確認した。覚醒を図る。【広重竜太郎】