おかわり弾にメモリアル風味をトッピングだ! 西武中村剛也内野手(31)が3回に13号2ラン、4回には歴代4位タイとなる通算13本目の満塁弾。通算30度目の1試合複数本塁打をド派手に飾り、6打点を加えて打点王にも再浮上した。

 浮かない顔をしていた。3回2死二塁。中村の漆黒のバットは阪神横山のカーブに放物線の角度を与える。特有の高い弾道にベンチの選手は総立ち。だが主砲は「レフトフライかな」と首をかしげた。手に残る感触とは裏腹に左翼席に十分な距離を残して飛び込んだ。「見ている人と本人の感覚の違いですかね。映像を見返して、よく考えたら、しっかりスイングできていたかな」と妄想でも1発の食感を再確認した。

 30度目のおかわり弾も「1本目が変な感じでアウトと思ったら意外とパワーがあった。2本目もどうかなと思ったら、やっぱりパワーがあった」と感覚を現実が超えた。4回2死満塁。石崎の真ん中低めのスライダーを捉え、左中間に運んだ。歴代4位タイとなる13本目のグランドスラム。1位の王貞治の15本を31歳で射程圏内に捉えたが「打てればいい。でも普通に考えたら出ないでしょう。そんなに簡単なもんじゃない」と周囲のあおりを制した。

 開幕から本塁打と打点の打撃2冠を争い、順調に見えるが「今季は1度も絶好調と思ったことがない」と言う。試行錯誤はグラム単位に及ぶ。26日の巨人戦まで漆黒のバットを乾燥機にかけて水分を飛ばし、20グラム軽い、920グラムを使っていた。だが「打感が良くない」と通常の940グラムに戻したものを27日から使用。「重い方が押し込める」と変更後、4戦中3発の量産態勢にシフトチェンジした。

 狙ってなくても本塁打になる。自然体の1発こそ好調のバロメーター。今季、得点圏での1発は1本にとどまっていたが、この日2本を加えた。「チャンスではホームランは意識していない。ランナーをかえすことを求めてやる。4番というより、みんなそれを第一にやっている」。それにしても不思議な感覚は最後まで残った。手応えと飛距離のギャップ。「珍しいと言えば珍しいです」。中村が新たな本塁打の境地に触れた。【広重竜太郎】

 ▼中村が満塁を含む1試合2本塁打。中村の満塁本塁打は昨年8月22日日本ハム戦以来13本目で、駒田(横浜)らに並び歴代4位タイに進出した。パ・リーグで13本は、藤井(オリックス)の14本に次ぎ、近鉄時代に13本の中村(DeNA)と並び2位タイ。交流戦では4本目となり、こちらはトップだ。また、中村の1試合2本塁打以上は今季3度目で通算30度目。マルチ本塁打の最多記録は王(巨人)の95度だが、西武で30度以上は清原36度、秋山30度に次いで3人目。現役で30度以上は高橋由(巨人)31度と中村の2人しかいない。