<日本ハム8-4ロッテ>◇17日◇札幌ドーム

 夢がかなった。やっぱり佑ちゃんは持っていた!

 プロ初登板、初先発の日本ハムのドラフト1位斎藤佑樹投手(22)が、今季の新人では勝利投手一番乗りを果たした。本拠地札幌ドームでのロッテ戦で5回6安打4失点ながら、打線の援護もあってうれしい初勝利。崩れそうで、崩れない。早実-早大とスター街道を歩んできた右腕が、変わらぬ強運ぶりを見せつけた。

 斎藤の夢が、現実に変わった。野球を始めたころからあこがれたお立ち台。インタビュアーから、なぜかマイクを渡され、満面の笑みで上がった。「早く北海道の一員となれるよう、がんばりたかったので、仲間入りできたかなと勝手に思っています」と、少し上ずった声に喜びがにじんでいた。

 注目を一身に集めた立ち上がり。「ユニホームの上から見ても心臓が動いているのが分かるぐらい」という吉井投手コーチの言葉通り、緊張していた。天を見上げ深呼吸し、プロ第1球を投じた。この日最速144キロの直球でストライク。しかし、その直球を3番井口に右中間スタンドに運ばれた。失投ではなかった。外角低めをめがけ勝負にいった球だった。「改めて直球がダメだと感じた。変化球に頼った方が今日は打ち取れる感じがしていた。今日はそれでいい」と、こだわりをあっさり捨てた。

 苦しいからこそ頼ったものがある。早実、早大時代から得意にしていたスライダーだ。4回無死一塁のピンチ。相対した主砲の金泰均に1ボール1ストライクからの3球目、この球で併殺に打ち取った。味方打線がリードを広げてくれた後の回。クリーンアップを分断したことで、余計な失点を重ねなかった。徹底的に低めを突き、失策を含めて12本の内野ゴロを打たせた。だれよりも速い直球、だれよりも曲がる変化球がなくても、通用することを証明した。

 順風満帆に見えるが、道のりは険しかった。3月6日のオープン戦巨人戦までは無失点と順調だったが、いよいよ初先発というタイミングで東日本大震災が発生した。同21日の阪神戦では3回9失点と打ち込まれた。最終登板となった10日のイースタン・リーグのヤクルト戦は、2軍相手に7回5失点。プロ初登板に不安を抱える一方で、復興へ向けた義援金募金活動に参加。プロ野球選手の影響力の大きさを実感し、自ら何かできないかと考えていた。多くの選手が行っていた義援金寄付を「自分もやった方がいいかな」と両親に相談。新人という立場もあり悩んでいた。結局は時期尚早と判断し、実現はしなかったが「できることをやっていく」と両親と約束した。今できることは、一生懸命プレーすること。それを誓いこの日のマウンドに立った。

 1回の第1球、プロで生き抜く決意が込められていた。「真っすぐをずっと追い求めていたので、これからも追求する気持ちを表しました。今日の1勝で満足せず、もっと高みを目指したい」。打たれはしたが、結果を残した。やはり、何かを持っている。【木下大輔】