<日本ハム1-0広島>◇29日◇札幌ドーム

 武田勝の投げる試合では得点できない-。そんな呪縛を解いたのは、1軍に上がったばかりの左打者だった。5回に殊勲の中前適時打を放った日本ハムの今浪隆博内野手(26)は、プロ5年目で初のお立ち台に上がった。「打った瞬間、入るとは思わなかったんですけどね」と、まるで本塁打を打ったかのようなコメント。ウケを狙ったが見事に滑り、2万8000人の観客を静まりかえらせてしまった。

 そんな朗らかさがあったからこそ生まれた一打だった。武田勝が黒星を重ねた5試合の間、今浪は2軍暮らし。「新聞で見て知っていたけど、今日も途中まで0点だったので(武田勝が投げると打てないというのは)ホンマやなあ…と」。変な気負いは皆無。通算3打点だった5年目の伏兵が、無欲で6試合ぶりにエース左腕へ得点をプレゼントした。

 1軍と2軍を行ったり来たり。「2軍では平常心でやれているのに1軍に来ると舞い上がるところがあった。でも、今日は冷静だった」。広島・前田健の甘く入ったチェンジアップを逃さなかった。「何十年ぶりという記録を止めたんだから、あれは大きい」という梨田監督の言葉が、やってのけた仕事の大きさを物語っていた。【中島宙恵】