ダル攻略や!

 阪神真弓明信監督(57)が北の大地で動いた。空路で札幌入りした30日、異例の全体練習を敢行した。しかも新井、城島、林威助ら6選手に次々と打撃指導した。借金「7」でこれ以上負けられない状況は続く。あす6月1日には26回連続無失点中の日本ハム・ダルビッシュと対戦予定。貧打解消なくして、借金返済はあり得ない。

 指揮官が貧打解消に、鬼気迫る動きを見せた。札幌市内の日本ハム室内練習場で行った全体練習。フリー打撃に向けて、準備をする新井に自ら近づいていった。

 「肩が入っている」。

 構えの段階で左肩が必要以上に捕手寄りになっていることを指摘した。さらに城島にも打撃指導。日本ハム2連戦の先発出場が予想される林威助に対しては、後片付けしている所を自ら歩み寄った。

 「ヘッドが下がっている。フライになりやすいぞ」。

 若手の俊介、柴田、上本にも熱心にアドバイスを送った。主軸を含む合計6選手への熱血指導。就任以来、シーズン中には見られない姿だった。

 真弓監督は通常、担当コーチに任せ、主力選手には各自の調整法を尊重するスタイル。しかし深刻な得点力不足に自ら激しく動く決意を固めていた。この日は空路で仙台から札幌入り。1時間近く到着が遅れるアクシデントもあったが、練習開始時間は変更せず、しかも異例の全体練習だった。現状打開の強い気持ちの表れか。「はい、がんばります」。険しい表情のまま、多くを語らず、帰りのバスに乗り込んだ。

 29日の楽天戦は、金本の逆転2ランで辛勝した。しかしまだ借金「7」。ペナントレースの危機的状況から脱していない。しかも日本ハムの初戦先発は右腕ウルフが濃厚。外国人先発に対し6連敗中と嫌なデータがある。2戦目は球界のエース・ダルビッシュが登板予定。打線の状態を考慮すると、2戦とも苦戦は避けられない。

 勝機を見いだすとすれば、やはり打線の奮起しかない。金本の言葉が「ダル攻略」のキーワードになる。「打てないときはヒットを狙いがちだけど、逆に長打を狙っていた」。楽天戦のヒーローインタビューでそう話していた。真弓監督も「打撃の形が良くないと、ホームランは打てない」と持論を展開する。

 当てにいくよりも、思い切って打ちに行け!

 指揮官の胸には、そんな考えがあるはずだ。浮上の時は、動いた先にきっと来る。【田口真一郎】