阪神の平田勝男新ヘッドコーチ(55)が背番号を2軍監督時代の「72」から「78」に変更することが17日、分かった。配置転換での背番号変更は異例だが、念頭には03年リーグ優勝で星野監督(楽天シニアアドバイザー)を支えた名参謀島野育夫氏(享年63)の存在がある。島野イズムを背負う平田新ヘッドコーチは代表監督を務めた21Uワールド杯の台湾から帰国、今日から高知・安芸キャンプに合流する。

 名参謀の背番号を背負う。2軍監督から1軍ヘッドコーチとなる平田氏は尊敬する参謀役を受け継ぐ思いで、島野氏の代名詞だった背番号「78」を選んだ。

 「ヘッドコーチになるにあたって、島野さんの背番号78に替えてもらうように球団にお願いした。島野さんを見て、いろんなことを勉強した。理想のヘッドコーチは島野さんだから」

 03年、阪神をリーグ優勝に導いたヘッドコーチこそ島野育夫氏だった。平田氏は当時、星野監督の専属広報を務め、間近で「鬼軍曹」とも呼ばれたその手腕に接してきた。04年に岡田新監督を支えるヘッドコーチに就任する際にも背番号78を受け継いだ。今季までの2軍監督では背番号72。1軍ヘッドコーチ就任は9年ぶりでリーグ優勝だけが求められる要職に戻ることで、再び、島野氏の後継者となる決意を背番号に込めた。

 今季は首位巨人に7ゲーム差をつけられ、リーグ優勝を逃した。CSを突破し臨んだ日本シリーズも敗れ、日本一を逃した。球団創設80周年の来季に向け、和田監督が続投し4年目の指揮を執る。優勝のみを目指して刷新された内閣の一員として、平田ヘッドコーチは求められる役割を十分に理解していた。

 台湾の次は休みなく高知・安芸へと飛ぶ。前日16日まで台湾・台中で行われていた第1回21Uワールド杯で21U侍ジャパン監督。1次リーグから全勝で勝ち進みながら、決勝で台湾に敗れ、あと1歩で世界一を逃した。帰国の途につくと「すぐに安芸に飛ぶよ。もちろんだよ」と明言し、阪神の顔になった。ベネズエラ戦で逆転3ランを放つなど台湾で大活躍だった2年目北條とともに今日18日、秋季キャンプ地の安芸入り。来季に向けてすでにスタートを切ったチームに、鬼の島野イズムを背負い合流する。

 ◆名参謀・島野育夫

 星野監督と中日、阪神の13年間をともに戦った。87年に中日星野監督が誕生すると、作戦兼外野守備走塁コーチなどで支えた。01年オフに阪神監督に就いた星野監督は中日2軍監督として残留が発表されていた島野氏を「どんな名刀でも、オレと島ちゃんの仲を引き裂くことはできない」として阪神ヘッドコーチに引っ張った。多彩な首脳陣をまとめ、03年のリーグ優勝に貢献。1度はフロントに入ったが岡田監督が指揮する05年に総合コーチに就き、再びリーグ優勝した。