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OGGIの「毎日がW杯」

OGGIの「毎日がW杯」

荻島弘一(おぎしま・ひろかず):1960年(昭35)東京都出身。84年に入社し、スポーツ部勤務。五輪、サッカーなどを担当して96年からデスク。出版社編集長を経て05年から編集委員として現場取材に戻る。

攻める日本「惨敗だっていいじゃないか」


 いよいよ始まる。4年に1回の「祭り」に、胸が高鳴る。サッカー世界一を決めるW杯、今回はブラジルが舞台だ。ネイマールのブラジルか、メッシのアルゼンチンか、日本代表は勝てるのか…。世界中が熱くなる1カ月、日刊スポーツのスポーツ部編集委員、荻島弘一が連載コラム「OGGIの毎日がW杯」をお届けする。

 「惨敗だって、いいじゃないか」。今回は、そう思いながら開幕を迎える。この時期になると、決まって聞かれるのは「日本は勝てるの?」という質問。これまでは多少は具体的に答えていたが、今回ばかりは分からない。「3連勝もあれば、3連敗もあるよ」と言った後「惨敗するかもしれないけれど、それもいいと思う」と付け加える。

 もちろん、30年を超える日本代表ファンとしては勝ってほしいと願う。決勝トーナメント1回戦でイタリアに勝ち、ブラジルとの準々決勝にでもなったら最高だろうと思う。それでも、決して低くない「惨敗のリスク」が頭から離れない。

 海外の評価やブックメーカーのオッズでは「コロンビアが抜けてギリシャがやや下、日本とコートジボワールで2位争い」というところ。ただ、コロンビアも絶対ではないし、10年前に欧州王者になっているギリシャも侮れない。4カ国とも突破の可能性があるし、敗退もある。見方によっては「死の組」でもある。

 そんな中、日本が挑むのは真っ向勝負だ。前回の南アフリカ大会は守りが優先されてきた。守備に人数をかけ、少ないチャンスを得点に結びつける戦法。しかし、今回は攻撃を重きをおいて、攻めて勝ちきることを目指す。

 前回までの日本は、大会のアウトサイダーだった。他の出場国に対し「格下」だったのは間違いない。ほとんどの相手が「日本には勝てる」と思っていただろうし、世界的な評価も低かった。ところが、今回は違う。本田や香川がトップクラブでプレーし、欧州の強豪国ともいい試合をしてきた。FIFAランクこそ低いが、C組で対戦する各国も「格下」とは思っていないはずだ。

 実力差がある場合は、それを埋めるための策が必要になる。「守りを固めて少ないチャンスを」は、その典型。南アフリカ大会はベスト16まで進んだが、世界との実力差を感じた。このスタイルでは、ある程度は勝ち上がれても世界の頂点は狙えない。本当に「強くなった」とは言えない。

 W杯で優勝するために、日本はブラジルで真っ向勝負を挑む。これまでのアウトボクシングを捨てて、インファイトで臨むわけだ。足を使って逃げながらポイントを狙っても、あるレベルになれば逃げ切るのは難しい。これ以上アウトボクシングを続けても、先はない。だからこそ、今回は逃げずに打ち合うことを目標にする。以前の日本には、接近戦を挑む勇気がなかった。ベスト8以上を目指すなら人数をかけて攻め込む勇気も必要になるのだ。

 もちろん、リスクは小さくない。打ち合えば、KOされることもある。展開によっては何発もぶち込まれて惨敗する可能性だってあるだろう。「勝っても負けても僅差」だった日本が「大勝も大敗もある」試合をしようというのだ。

 戦う気持ちを失っての大敗は見たくないが、最後まで攻める気持ちを貫いての惨敗ならば、日本が進化する過程として喜びたい。正面から世界と打ち合える日本の成長がうれしいし、それをやり抜こうとする選手の勇気が頼もしい。

 ザッケローニ監督は、成績についての目標を最後まで口にしなかった。リスクを背負った挑戦であることを、監督自身が1番分かっているからだろう。今大会の日本代表には、成績よりも内容を期待したい。大勝も、惨敗も、進化の途中。その先に世界の頂きがあることを信じたい。

















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