日本映画製作者協会が、最も優れた新人監督、優秀なプロデューサーに授与する新藤兼人賞の、2016年度授賞式が2日、都内で行われた。

 金賞を受賞した、宮沢りえ主演映画「湯を沸かすほどの熱い愛」の中野量太監督(43)は壇上で、これまでの映画人生を振り返り、感極まって号泣した。

 「9年くらい前に、この会場の授賞式に紛れ込んで…金賞、銀賞が輝いていて、いつかあの舞台に乗られたらなと思いました。新藤兼人賞は、プロデューサーが選んでくれる賞。僕は2年くらいで挫折して、映画からドロップアウトして…その中でも、ずっと僕を支えてくれるプロデューサーがいました。どうしても映画を撮りたくて、自分で100万円ためて、それを持っていって『一緒に映画を作ってください』と言いました。何の保証もない僕に、一緒にお金を出して作ってくださった映画が(13年の前作)『チチを撮りに』という映画。それを評価していただいて、今回『湯を沸かすほどの熱い愛』のプロデューサーが「中野君、オリジナルで作ろう」と言ってくださいました」

 自主製作映画に取り組んできた中野監督にとって、「チチを撮りに」は初の長編映画だった。同作が評価されて製作、公開し、今回の受賞作となった「湯を沸かすほどの熱い愛」は、商業映画デビュー作だった。「湯を沸かすほどの熱い愛」は、10月29日の公開後、国内で高い評価を受け、ヒットを続けている。

 両作品ともに、中野監督が脚本から手がけたオリジナル作品だ。小説や漫画などの原作がないオリジナルの映画は、どれだけの客層を取り込めるかなど予測が難しく、ヒットの保証もないため昨今、企画を通して映画化することが難しい。若手の監督の中には、資金を求めて海外の映画祭に自ら映画を持っていき、評価された上で、海外から出資を募り映画を撮る人も増えているのが現状だ。

 中野監督は、自分を信じ、1度、ドロップアウトした映画の世界に引き戻し、支えてくれたプロデューサーたちに、涙ながらに感謝した。

 「今、オリジナル映画を新人の僕が撮ったって、興行的にどう勝負できるか保証がない中で、僕を信じてやってくれました。だから、どうしても恩返ししたくて、懸命に、懸命に撮りました。心からこの人のためにやりたいという関係性を作れた…それが僕にとってのプロデューサーで、僕を本当に信じてくれました。僕と同じくらい受賞を、みんな喜んでくれていると思う…それがうれしいです」

 中野監督にはトロフィーと、副賞として50万円が贈られた。