<連載「気になリスト」(16)>

 レンジャーズ・ダルビッシュ有投手(26)の末弟KENTA(20)が、俳優として存在感ある演技を見せている。公開中の映画「悪の教典」(三池崇史監督)で不良少年を熱演。目標はメジャー挑戦を成功させた兄と同様、海を渡ってハリウッド進出を果たすことだという。

 「悪の教典」撮影後、覚悟を決めた。「俳優の仕事を30年40年継続する」。兄にもメールで伝えた。「有って基本、否定的なんです。でも僕が送ったメールから何かを感じ取ったのか、母に『いいもんに出会ったな』と言ってたみたい。多分応援しているんじゃないですか」。

 兄の名前の大きさに複雑な思いはある。「ダルビッシュの弟」として見られることは「今でも否定的な部分はあります。男3兄弟なので、プライドも高く、比べられたくないという感情も大きいんです」。もっとも兄の名前だけで、映画出演が決まったとは思っていない。「オーディションで通ったと思っています。自信を持って、この仕事やらせてもらってます」。

 家族の絆は固い。父親ファルサさんはイラン人、母親は日本人。「うちの家族は中途半端な仲じゃないんです。昔から結構苦労があって、全員で乗り切ってきた。有も次男も僕も、それぞれ乗り越えてきた。だからあまり、メジャーリーガーのダルビッシュ有として見たくない。僕からしたら普通の兄貴なので」。

 とはいえ、兄に学ぶことも多い。「野球に対して人の話を一切否定しない。親戚のおっちゃんが『もっとスライダーを投げた方がいいぞ』とか言うと、目をじっと見ながら30分間も話を聞く。それで次のキャンプでスライダーを増やしたりしてるんですよ」。

 ある時、兄から言われた言葉を胸の中にしまっている。

 「自分の中で将来をイメージしろ」

 背中をぐっと押された気がした。「25歳までにハリウッドに行こうと思いました」。まだまだ実績もないことは自分が一番知っている。「それには日本で来年主演しないと間に合わない(笑い)」。冗談で済ませる気などない。「トライもしてないことを無理だと言うのも良くない。本気で思ってますから」。兄譲りの負けん気が、飛躍を支えるバネになる。【山田準】

 ◆KENTA(けんた)本名ダルビッシュ賢太。1992年(平4)1月19日、大阪府生まれ。小学生の時に野球を始め、「今でも130キロ投げられる」。途中でサッカーに転向して中学2年で米国にサッカー留学。現在は大学(経営学部)3年生。09年に俳優活動スタート。幼いころ、子役で映画出演した経験もある。176センチ、58キロ。血液型A。(11月26日付

 紙面から)