第25回「フジテレビヤングシナリオ大賞」で、大賞と佳作を史上初めて同時受賞した脚本家小山正太氏(26)の大賞作品「人生ごっこ」が、今日22日深夜0時55分から放送される。かつて人気作を豊富に抱えていた同局だが、今年は新作の大ヒットを出せないまま。その現状を打破する担い手と期待される小山氏に話を聞いた。

 「人生ごっこ」は、漫画雑誌編集者と漫画家、ガールズバーで働く女性(新川優愛)とのやりとりから、人生に悩む主人公(森岡龍)の生きざまを描いている。28歳の主人公は大手出版社に就職しながらも原稿が遅い漫画家へのストレスから、漫画家になりすましてガールズバーでモテモテ…。小山は執筆当時を振り返り、「スランプ中に基本に返って、シナリオの教本を見ながら書きました。三谷幸喜さんの『有頂天ホテル』が教本。うそを軸に書くのが面白かった」と笑った。

 佳作の「オナラまで、愛して欲しくて、三千里」はダメ男たちとの関わりから、自身の葛藤を乗り越える再就職活動中の25歳の女性の姿を描いている。「こちらの方が大賞向けだと思ったんですけどね。彼女におごってもらったり、お金借りたり。自分の実体験も生きてます」。

 受賞への原動力となったのが、就職活動の失敗だった。「フジテレビの1次面接で落とされたのをバネに、去年は13本、今年は6本のシナリオを応募しました」。12年1月、大学院修了を前にして就職活動は全滅。「すぐに名刺を作って自称ライターです」。編集プロダクションでアルバイトしながら、テープ起こし、企画、取材。風変わりな墓の特集、ギャル男…積んだ経験がシナリオ作りに生きている。

 就職試験では蹴られたが、根っからのフジっ子だ。つらいときは究極の家族愛を描いた「GOLD」(10年)を見て、「やまとなでしこ」(00年)や「101回目のプロポーズ」(91年)の世界観にひかれる。「貧乏だったり不細工だったり、コンプレックスを抱いた男が絶世の美女に憧れる。落語の『紺屋高尾』に通じるものがある」。大学院1年の時には就職活動のインターンシップでフジテレビに出入りした。同局はドラマも含めて、かつてのように視聴率が稼げない状況が続くが、根付く社風も好んでいる。「フジテレビは、いつだって挑戦的。サブカル路線だって、トレンディードラマだって、土曜23時台のドラマだって切り開いてきた」。

 憧れの脚本家は坂元裕二氏、野島伸司氏らヤングシナリオ大賞の先輩たちで、「ダブル受賞は恐れ多い。でも、新しい『月9』を書いてみたい。フジテレビを舞台に、ドラマを見ない人も取り込みたい」と話している。【小谷野俊哉】

 ◆小山正太(こやま・しょうた)1987年(昭62)7月17日、東京・世田谷区生まれ。日大芸術学部映画学科を経て、12年3月に同大学院修了。176センチ、70キロ。血液型A。