千葉県松戸市の小学3年生、ベトナム国籍のレェ・ティ・ニャット・リンさん(9)が遺体で見つかった事件から明日26日で9カ月。リンさんが通っていた六実第二小の当時の保護者会会長で、わいせつ目的誘拐などの罪で起訴された渋谷恭正被告(46)は黙秘を続けている。被告の死刑を求める署名を集めているリンさんの父レェ・アイン・ハオさん(35)は日刊スポーツの取材に「リンちゃんの身に何をしましたか。真実を話してほしい」と被告に訴えた。

 明日26日、渋谷被告の第2回公判前整理手続きが行われる。死体遺棄容疑での逮捕以来、一貫して黙秘を続ける被告に、遺族は何を思うのか。ハオさんは「渋谷さんには、リンちゃんが死ぬ前のこと、真実を話してほしい」と求めた。

 これまでも、被告に直接会って、問いただしたいと強調。あらためて、被告に聞きたいことを問うと、悲痛な問いかけがあふれた。「リンちゃんの身に何をしましたか? どうしてリンちゃんを殺さないといけませんか? どうしてリンちゃんに残酷なことをしないといけませんか?」。

 今月8日は、リンさんの10回目の誕生日だった。昨年の9歳の誕生日は、家族やリンさんの友人と一緒に、にぎやかに祝った。今年は、遺影の前にケーキを供えた。「リンちゃんの誕生日はリンちゃんと会いたいです。リンちゃんの声を聞きたい。リンちゃんと一緒に遊びたい。リンちゃんと握手したい」。

 ハオさんはフェイスブックやツイッターなどを通じて、被告の死刑を求める署名を続けている。6月から始めた署名活動は、日本、ベトナム、その他の国に広がり、数万件に上る。

 SNSでは、07年12月8日生まれのリンさんの誕生からの成長が写真と動画で記録されている。小さな弟(3)をかわいがる様子。ハオさんと楽しく遊ぶ様子。幸せな家族の記録だ。事件後、警察で遺体となったリンさんと会い「起きて。リンちゃん、学校行くよ」と何度も何度も語りかけた様子も…。別の動画の中の小さな弟は、小さな手の中に持ったリンさんの写真に、ちぎったパンを食べさせるまねをして「リンちゃん」と語りかけている。

 「ニャット・リン」は、ベトナム語で「日本・輝き」という意味だ。ハオさんによると、リンさんは日本が大好きだった。しかし、その日本で事件は起きた。「犯人に聞きたい。もしあなたが私の立場なら、犯人に対して何をしますか」。あふれる憎しみを必死に抑えて集めた署名は、公判前に千葉地検に提出するつもりだ。【清水優】

 ◆リンさん殺害事件 3月24日午前8時ごろ、松戸市六実の自宅から登校したリンさんの行方が分からなくなった。同26日午前6時45分ごろ、約11キロ離れた我孫子市北新田の排水路脇で、着衣を身につけていない状態で死亡しているリンさんを釣り人が発見した。県警は4月14日、死体遺棄容疑でリンさんが通う六実第二小の保護者会会長、渋谷恭正被告(46)を逮捕。5月5日、殺人などの疑いで再逮捕。千葉地検は5月26日、わいせつ目的誘拐、強制わいせつ致死、殺人、死体遺棄の罪で起訴した。