将棋の第71期ALSOK杯王将戦挑戦者決定リーグの最終一斉対局が、24日午前10時から東京・千駄ケ谷「将棋会館」で行われた。

すでに5連勝で渡辺明王将(名人・棋王=37)への挑戦権を獲得し、王将戦初登場を決めた史上最年少4冠、藤井聡太竜王(王位・叡王・棋聖=19)は午後7時39分、101手で永瀬拓矢王座(29)に敗れ、5勝1敗でリーグを終えた。年度内5冠がかかる7番勝負は来年1月9日、静岡県掛川市で開幕する。

永瀬の手堅い受けに苦戦し、最後に黒星を喫した。「敗れてしまったのは残念ですけど、実力以上の結果が出せたかな思います」。終局から1時間足らずでの記者会見では、気持ちを切り替えていた。

今期の7人総当たりのリーグ戦では白星を重ねた。4回戦、タイトル獲得通算99期の羽生善治九段(51)戦が最大のヤマ場だった。「終盤際どい勝負で勝つことが出来て、挑戦に近づいた感じがします」と振り返った。

初の王将リーグ入りを果たした前々期は最終一斉対局で4勝1敗同士の広瀬と直接対決に敗れ、タイトル戦初登場のチャンスを逃した。前期は、前半3連敗が尾を引き、初めてリーグ陥落の悔しさも味わった。今期は3人がリーグ入りできる2次予選を勝ち上がった。ようやく大舞台に上がることができる。

冬のタイトル戦は初めて。「暑がりなので、機構的には冬の方がいいです。和服を仕立てることになるかなと思います」と準備に取り掛かる。

王将戦の最年少挑戦記録は、11年前の豊島将之九段の20歳。昨年、今年と棋聖戦5番勝負で対戦した渡辺とは初めて7番勝負を戦い、先に4勝すれば羽生の22歳10カ月を上回る史上最年少5冠となる。「現時点で意識することではありません。7番勝負でいい将棋をして盛り上げられればと思います」。闘志は内に秘めている。【赤塚辰浩】

【第71期ALSOK杯王将戦7番勝負日程】

◆第1局 1月9、10日、静岡県掛川市「掛川城二の丸茶室」

◆第2局 1月22、23日、大阪府高槻市「山水館」

◆第3局 1月29、30日、栃木県大田原市「ホテル花月」

◆第4局 2月11、12日、東京都立川市「SORANO HOTEL」

◆第5局 2月26、27日、佐賀県上峰町「大幸園」

◆第6局 3月12、13日、島根県大田市「さんべ荘」

◆第7局 3月26、27日、新潟県佐渡市「きらく」

※開催は2022年

◆王将戦 1950年(昭25)に一般棋戦として創設。翌年からタイトル戦に。8大タイトル(竜王・名人・王位・王座・棋王・叡王・王将・棋聖)の序列は7番目。1次予選、2次予選はトーナメント。2予の勝ち上がり3人と、シード棋士4人の計7人による総当たり戦を例年9月から年内に開催して挑戦者を決める。同星の場合は原則、順位上位の2人によるプレーオフ。2日制の7番勝負は例年1~3月に、全国を転戦する。リーグ陥落3人と言う条件に加え、リーグ開催時に在籍者がヤマ場にさしかかった他棋戦でも勝ち上がっていたり、タイトル戦と掛け持ちする場合があり、中2~3日で対局をこなすことから、「将棋界で最も過酷なリーグ」と呼ばれる。

◆5冠王 将棋界では過去3人。故大山康晴十五世名人は1963年(昭38)2月から3月、64年2月から66年7月、67年1月から同年7月まで、いずれも十段(現竜王)・名人・棋聖・王位・王将とタイトルを独占した。最初の達成時年齢は39歳10カ月。また、中原誠十六世名人(引退)は78年2月から79年2月までやはり十段・名人・棋聖・王位・王将を保持していた。達成時年齢は30歳5カ月。最年少は羽生善治九段の22歳10カ月。93年8月、竜王・棋聖・王座・棋王に次いで王位も獲得した。羽生は同年竜王を失ったが、翌年に名人となると、竜王も獲得して94年12月に24歳2カ月で6冠に。残る王将を96年2月に獲得し、25歳4カ月で7冠全制覇を果たした。7冠は、同年7月に棋聖を三浦弘行現九段に奪われるまで続いた。