窮地の「4回転キング」が意地を見せた。優勝候補の一人だったネーサン・チェン(18=米国)が、17位に沈んだショートプログラム(SP)の失墜から、フリーで「史上初」のこん身の演技で復活した。

 5種類の4回転ジャンプを操る米国の星は、冒頭のルッツに始まり、合計6回の4回転ジャンプを認定させ、うち5回を成功させた。五輪での認定の最高はソチ大会での3回。一気に上限を打ち破った。得点も215・08点と自己ベストを更新し、合計297・35点まで積み上げた。

 ジャンプの種類は4回転ルッツ、4回転フリップ-2回転トーループ、4回転フリップ、後半に入り4回転トーループ-3回転トーループ、4回転トーループ、4回転サルコー。決める度に会場には驚きと歓声が増していき、万雷の拍手の中でフィニッシュすると、感極まったように両手で顔を覆った。

 金メダルが期待されながらSPで思わぬ不振を極め、一夜明けたフリーで驚異的な演技を見せる姿は、14年ソチ五輪の浅田真央さんにも重なった。前夜のSP後には、「起こり得る全ての失敗をしてしまった。何が起きたか、しばらく考える時間が必要だ」とぼうぜん自失だった。そこから気持ちを立て直してきた精神面は目を見張る。

 米国代表を支援するユナイテッド航空の広告では平昌五輪の主役として抜てきされ、アメコミ風のスーパーヒーローに扮(ふん)し、「KING QUAD(4回転)」の名前を授かった。その異名がオーバーではないことは、フリーで証明して見せた。