気を配れる選手になりたい-。ブンデスリーガで4シーズン目を迎えた日本代表DF内田篤人(25=シャルケ)が、守備での成長を遂げている。同代表合宿が行われた東欧で日刊スポーツの取材に答え、理想の選手像を明かした。欧州移籍後、内田は「ボール奪取率」が急上昇。6月のコンフェデレーションズ杯でブラジル代表FWネイマールを封じた守備力は、2連敗を喫した今回の遠征でも発揮されていた。

 内田はいつだって自然体だ。セルビアの青空の下で行われた代表練習後、ピッチを離れると「ここ(セルビア)がどこにあるのか分からない」と笑いを誘う。10日間の代表合宿でセルビア戦、ベラルーシ戦ともに先発。その間、シャルケからは「絶対にけがをして帰ってくるなよ」と厳命されていた。それほどクラブから必要とされている。176センチ、76キロ。日本でも決して大きくない。欧州では小柄な体格で、どうやって渡り合っているのか。

 「シャルケでは目の前で190センチくらいの選手たちがぶつかっていますからね。それを見てたら、自分もやらないといけないってなりますよ。1対1では日本にいるときと変わったと思う。僕自身『1対1に快感を覚えてしまっている』っていうのはある。一発で仕留めることに」

 足先だろうと、一瞬でも相手より先にボールに触ってクリアする。だからスライディングの数も自然と増えていることは自覚しているという。今季でドイツ4季目。1対1はドイツ語で「ツバイ・カンプフ(2人の戦い)」と言うほど重要視される。そんな環境に身を置くことで、ここ2年代表戦でのボール奪取成功率が急上昇。シャルケ移籍前の75・8%から12年以降は96・2%と驚異的な数字をたたき出している。同様にクロスブロック数も1試合平均で約倍増した。

 根底にあるのは「DFラインの1人なんだから守るのは当たり前」という気持ち。「どっちがいいとか、悪いとかじゃなくて」と前置きした上で「(日本とドイツは)中高生のときの教え方が違うんだと思う」と指摘する。

 通常日本では、1対1の守備でボールを持った相手選手に対して「飛び込むな!」と教わる。うかつに足を出しては、簡単にかわされてしまうから。相手との間合いをつめながらボールを奪う、もしくはカットする。それが日本で育った選手の常識だ。一方で、ドイツでは間髪をいれずに飛び込む。かわされる“ハイリスク”よりも、先にボールを奪えたときの“ハイリターン”に価値を見いだす。

 そんな日本式とドイツ式の守り方を「使い分けているところはありますね」というから結果も出る。6月のコンフェデ杯ブラジル戦では世界最高峰のFWネイマールとマッチアップ。前半10分に間合いをつめて食い止めると、後半19分にも対応した。読みと駆け引きを駆使。今回の東欧遠征でのセルビア、ベラルーシの2戦で喫した3失点、いずれも右サイドが崩されたものではない。長身選手相手に安定感を見せた。そんな内田が理想とする選手は。

 「気配りができる選手。そういう選手というのは危ないところに顔を出す。相手が嫌なところにいたりする。地味かもしれないけど、そういう選手がいるとチームは勝てる。今ちゃん(今野)とか(小笠原)満男さんとか。シャルケだとノイシュトゥッター。そういう選手になれればいい」

 ちなみに今はどれくらいか?

 「もうちょっとかな」と自己採点。そのギャップの分だけ、ますます代表で存在感を増していく。【栗田成芳】