今春、栃木・太平洋クラブ益子PGAコースの支配人に植田浩史プロ(56)が就任した。レギュラーツアーでは94年ゴルフダイジェスト2位が最高位で勝ち星こそないが、栃木県オープンなど優勝、10年にはスターツ・シニアで勝利を挙げたツアープロだ。日本プロゴルフ協会(PGA)でトーナメントディレクターを務めたこともあり、現在はPGA副会長の1人でもある。

 先日、お会いすると「毎日勉強中です」と照れ笑いしておられた。現場サイドから経営者側への転身は、どんな業種でも大変なことに違いない。

 同コースには、6月1日に「PGAアカデミー」が開設される。その提携から同コースの名称に「PGA」の文字が加わり、植田プロが支配人になる流れになった。アカデミーだから、もちろんPGA会員=PGA資格認定プロテスト合格者=による一般ゴルファーへの指導がメーンになる。同時にPGA会員に対して「支配人養成プログラム」など、ゴルフ場のマネジメント業務の研修を行う構想がある。植田支配人はそのモデルケースとなるのだろう。

 PGA会員は約5400人。そのいわゆるプロと呼ばれる者の中で、ツアーで戦い、賞金で生計を立てられるのは一握りだ(通常規模のツアー競技は出場144人で、賞金がもらえるのは予選通過者だけ)。ティーチングプロでも、確固たる地位を固めているのは一部といえる。倉本昌弘PGA会長(59)によると「大半の会員」は、プロ資格を十分に生かし切れていない。そうした人材の職域を広げることが、PGAの狙いであり、支配人養成プログラムはその一環だ。

 倉本会長は「PGA会員にも、世間の人にも、プロゴルファーの見方を変えてもらえるように」と話す。プロはツアーかレッスンで稼ぐもの、という概念を変えるという意味だ。支配人だけでなく、ヘッドプロ、キャディーマスター、芝草管理、レストラン部長などの人材を育て、ゴルフ場に派遣する仕組みを目指している。

 現在は各PGA会員がどんなスキルを持っているか、例えば語学、商業科の出身者なら簿記、教員免許など…確認しているという。倉本会長は、支配人以下マネジメント陣営をプロでそろえ、チームとしてゴルフ場へ派遣する形を、今年中には実現させるつもりだ。

 日本では99年の日本ゴルフツアー機構(JGTO)発足を機に、プロ宣言すれば(試合に出られるかどうかは別として)プロとして扱われることが可能になった。プロテストに合格してPGA会員になる意味が、ぼやけてしまった印象はぬぐえない。

 もちろん、稼げなくても苦労をしても、ツアーで戦うことを目指して、優勝カップを掲げることを夢見て、努力する姿は美しい。一方で、年齢的な理由、家庭の事情などで“路線変更”を強いられることは、誰にでも起こり得る。

 資格は「一生もの」だ。だが、生かさなくては“飾り”に過ぎない。セカンドキャリアの問題に向き合う時、それが「武器」となれば資格の価値が上がるということだ。地道な取り組みかもしれないが、今、PGAがやるべきことであるのは間違いない。成果に期待したい。【岡田美奈】