久保谷健一(45=フリー)が、5年ぶりとなるツアー通算7勝目を挙げた。7バーディー、ノーボギーの64で回り、通算11アンダーの273でホールアウト。最後は宮本勝昌(44)とのプレーオフを制した。最終組より8組前で出て、12年日本オープンと同じ6打差からの大逆転。腰痛に苦しみ、引退も考えたというベテランにとって、5年シード最終年という崖っぷちから起死回生の1勝となった。

 久保谷が苦笑交じりに切り出した。「帰らなくて良かった。2人で泥仕合しちゃいましたけど…」。宮本の第1打がOBとなり、ボギーで制したプレーオフ。後続が崩れ「僕が優勝しちゃまずい」と言った12年日本オープンとダブって、喜びは控えめだったが、話していくうちに、実感がこもった。「今年ダメならやめた方がいいんじゃないかという“かど番”で優勝が転がり込んできた。もうちょっとやれってことですかね」。

 腰痛に苦しんだ14年に手術を受けるも「無理を言って切ってもらっただけ」と根治には至らなかった。昨季は23戦で16度の予選落ち。真っ暗になるまで居残り、月明かりを頼りにボールを転がしたかつてのような猛練習は、もうできない。入念なケアで回復に要する時間を縮め、消えることのない痛みとの付き合い方を覚えた。今季は国内開幕戦で12年以来となる予選通過。かすかな手応えがあった。

 前半は合計わずか9パット。「人生で3本の指に入るくらい良かった。一緒に回った人が『この人は神様か』みたいな顔をしてた」。後半も11番で15メートルを沈めるなどグリーン上で他を圧倒。「若い人と同じスイングはできない。これが生きていく道」と、今後のスタイル転換にヒントを得た。

 「ゴルフでイライラして『何でオレって、こんな人間なんだろう』ってグダグダ飲むから、いい酒だった記憶がない」と、大好きなはずのお酒も受けつけなくなっていた最近。「今日は浴びるほど飲んじゃうと思う」。久々に「いい酒」が飲めそうだ。【亀山泰宏】

 ◆久保谷健一(くぼや・けんいち)1972年(昭47)3月11日、神奈川県生まれ。ゴルフは10歳から。明大ゴルフ部を経て95年プロ転向、97年フジサンケイ・クラシックで初優勝。03年に米ツアー参戦経験。02年日本プロ、12年日本オープンで日本タイトル2冠。174センチ、70キロ。趣味は「子育て」。