<男子ゴルフ:ANAオープン>◇最終日◇20日◇北海道・札幌GC輪厚C(7063ヤード、パー72)◇賞金総額1億1000万円(優勝2200万円)

 谷口徹(41=フリー)が「世代交代阻止」へ、意地の復活勝利だ。首位から出て2バーディー、2ボギーの72で回って通算16アンダーの272で、約2年ぶりのツアー通算15勝目を挙げた。過去2度賞金王になっており、最年少賞金王を目指す石川遼(18)に対しても、壁になることを宣言。新たな目標に永久シード(通算25勝)を掲げた。

 02、07年賞金王の自負が、谷口徹を奮い立たせていた。07年日本オープン以来2年ぶりの優勝会見で、今後の目標を聞かれ「遼クンでしょ」。賞金ランク1位の18歳に「そんなに簡単に賞金王取らせないよ。そのための1勝。来週も頑張りますよ」と言い切った。

 石川とは1月にタイで行われたアジア対欧州の団体対抗戦ロイヤル・トロフィーで共に戦った仲。「海外の経験が大きいんじゃないかな。全然違う」とその実力を認めるからこその「阻止宣言」だ。若手の台頭はツアーの活性化になることも分かっている。それでも「世代交代とかのたまっているやつもいるけど、『100年早い』とののしっておきました」と笑うのは元キングの貫禄(かんろく)だ。

 若手にはない武器がある。「ロングヒッターはいっぱいいますけど、パー5で(バーディー)取れなくてもほかで取れば勝てる」。飛距離を経験で補った。本大会はプロデビュー戦だった92年から通算12回目の出場。「どこに乗せて、どう打ったらいいか、ピン位置を見て分かる」。4日間通じて石川がパー5で2イーグル、3バーディーだったのに対し、谷口は4バーディー。この日もパー5は4ホールともパーで「フェアウエー打って、ボギー打たないことだけ考えた」。72ホールでわずか4ボギーは出場選手中最少だ。

 昨年は19試合出場で最高位は5位。7月全英オープンでは、大会直前の背筋痛で棄権するなど、海外メジャー出場含め、調整に苦しんだ。今年は2月下旬に自動車事故で左肩を脱臼する不運もあった。この日も表彰式で優勝杯を掲げるとき「左肩が痛いんで高くは無理です」。ようやくつかんだ復活優勝に「もっとうまくボールコントロールできていたんで、まだまだ。でも次に向けての自信にはなる」とうなずいた。

 新たな目標もできた。同組で回った中嶋のベルトに輝く永久シードの証しである金バッジ。「あれがあるからトミーさんも頑張れるのかも」。若手の壁を目指す41歳が、あと10勝で手が届く大記録に照準を合わせた。【阿部健吾】