土俵の鬼が、大相撲の聖地に別れを告げた。1日に死去した第45代横綱で初代若乃花の花田勝治さん(享年82)の棺(ひつぎ)を乗せた車が4日、東京・両国国技館を訪れ、日本相撲協会の放駒理事長、花田さんのおいにあたる貴乃花理事や、横綱白鵬ら幕内力士たちに見送られた。同日夜には、東京・中野区の宝仙寺で通夜が営まれ、約850人が参列した。
棺を乗せた車は、蔵前国技館跡地を経由し、午前11時半に両国国技館へ到着した。正面玄関前には、けいこ総見を終えたばかりの幕内力士、協会役員らがずらり。遺影を持った花田さんの次男浩さんが、車を降りて一礼すると、まわし姿の白鵬らも頭を下げた。見守ったファンから「若乃花、ありがとう!」の声が上がった。
びんつけ油のにおいに、汗のにおいが入り交じる角界独特の空気。浩さんは、協会の計らいに感謝した。「けいこの後、そのまま残ってくれて、久しぶりに土俵のにおいを感じました。感激しました。おやじも喜んでくれたと思います。若乃花と声を掛けられた時は、じーんとしました」。
車は宝仙寺へ向かい、午後6時から通夜が営まれた。法名は「巍勝院釋治道」。「巍(ぎ)」という字には「姿美しい」との意味が込められた。棺には、散歩好きだった花田さんのために、トレーニングウエア、ハンチング帽に加え、紋付きはかまやスーツが入れられた。遺影は約15年前、相撲博物館の館長を務めていた時の、数少ない笑顔の写真が使われた。
参列した放駒理事長(元大関魁傑)は「今、こういう時期だから、お見舞いに行った時も心配されて『しっかりやってくれ』と言われた。写真を見ていると、もう1度、言われているのかなと思いました」と話した。相撲にささげた花田さんの人生。通夜の日にけいこ総見が開かれ、役員、関取がそろったのは、偶然ではない。
現役時代を過ごした旧蔵前国技館、理事長として協会を引っ張った両国国技館。2つの聖地に別れを告げ、5日に告別式が行われる。【佐々木一郎】

