小高い丘を登り切ったら、雨もやんで太陽が差してきた。本拠地ドームから約1時間半。フロントガラスのワイパーはずっと動きっぱなしだったが、奇跡のような青空が出迎えてくれた。
佐賀・唐津市内にある墓地に元ダイエーホークスの「中継ぎエース」だった故藤井将雄投手は眠っている。13日は藤井が31歳でこの世を去って26回目の命日だった。ドームでのチーム練習を終えた若田部投手コーチは車を走らせ墓前に向かった。1学年先輩である藤井を兄貴のように慕い、先発&中継ぎの主力としてともにダイエー初優勝の原動力ともなった。「ずっと雨が降っていたんですけどね。こんなに晴れるなんて」。若田部コーチは雲を蹴散らすように姿を見せた太陽をまぶしそうに見つめた。
墓地からは玄界灘に浮かぶ神集(かしわ)島が目の前に見える。海と山に囲まれた風光明媚(めいび)な環境で、藤井はまっすぐな性格に育ったのだろうと想像した。「すみません、佐竹さん、食事の約束はまた今度にしてもらってもいいですか?」。99年の日本シリーズ中にナゴヤドーム(現バンテリンドーム)でアップを終えた藤井がそう言ってきた。「ちょっと検査で引っかかっちゃって」。1年後に藤井は逝った。リスケの日取りは今も決まっていないが、藤井の故郷で「再会」できた。
若田部コーチはお供えの花を丁寧に墓前に飾ると、手を合わせた。「命日に来られてよかった。いつも年内にはお参りしようと思っているので」。藤井がこの世を去ってからほぼ毎年、お参りを続けているという。「藤井さんは30歳の若いまま。もう僕はこんな白髪でね。また来ます」。いよいよCSファイナルが始まる。シーズンは大差を付けて勝った日本ハムが相手だが、油断はできない。「先発投手も大事ですけど、短期決戦は中継ぎですかね」。先輩が眠るお墓を一度、振り返って、若田部コーチは丘を降りて行った。【佐竹英治】




