高卒プロ7年目の巨人山瀬慎之助捕手(25=星稜)の捕球ポジションに注目した。
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山瀬の成長を感じる試合だった。バッティングでは藤浪から右前に確実にタイムリー。ミート力に確実性は見えた。1軍には大城を筆頭に甲斐と小林がいる。そこに割って入るべく、岸田もファームで汗を流している。山瀬の立ち位置は良くはない。7年目にして、1軍にはい上がる序列にいる。本人も必死だろう。
こうしたことは本人がもっとも切実に思っていることだ。はるか昔のことになるが、私も高卒でプロ入りしているから、なんとなく似たような気持ちは分かる。チームの捕手メンバーを見て、自分の立ち位置がそれとなく分かる。練習するしかないのだが、1軍昇格のチャンスも見込めないと、どうしても気持ちはめいる。
だからといって、2軍で気の抜けたプレーをすると、それで一気に評価が下がってしまう。難しいところだ。理屈ではチャンスをつかむために気を抜けないという原則は理解していても、春が過ぎ、夏も終わると、焦りを通り越して、やや徒労感すら覚えるものだ。
そんな気持ちかなと、スタンドからミットを構える山瀬の後ろ姿を見ていた。初回の守備だった。2死一塁。一塁走者は小田。何の気はなしに山瀬を見ていて気が付いた。左膝を地面につけている。一塁に走者がいる。打席には左打者の井上絢。ただでさえ、左打者で一塁走者のスタートが見づらい。かつ、左膝を地面についていたら動きが遅れる。
小田にスタートを切られたら、刺せないだろう。そんな一抹の不安を覚えつつ見ていると、カウント2-2から、案の定、小田がスタートした。
5球目はカーブ。ああ、これでは間に合わないなと思った瞬間、山瀬は機敏だった。スッと膝を戻し、素早く送球姿勢に移り、スパッと二塁でアウトにした。山瀬の鉄砲肩はよく知っていたから、強肩と正確な送球に驚きはなかったのだが、捕球から送球へのスムーズな動きに驚かされた。
左膝を戻す動きを、練習を積んでいたような気がした。動きが滑らかで、体が覚えているような、流れるような動作だった。私の現役時代、コーチ時代を含めて盗塁の可能性がある場面で、左膝を地面につけて捕球姿勢を取る捕手を知らない。
どうして膝をつけていると送球が遅れるのかと言うと、メジャーリーガーのようなとてつもない肩の強さがなければ、膝をついたまま二塁に強くて正確な送球はできない。それは日本人としての骨格、筋肉の問題だと思う。だから膝をついたままの送球は日本人には適さない。
となると、地面につけていた膝を元に戻す動きが加わるため、一手間増えることになる。だから、わずかな時間差だが、送球が遅れてしまうため、アウトにする確率が低くなる。
捕球直後、やや右足を少し前に出し重心をかけてから、軸足の左足に重心を移して送球に力を伝える。そのため、送球の強さと、左足の動きは直結する。左足の動きがほんのわずかでも遅れると、強く正確な送球はできない。だから、左膝を地面につけた山瀬に私は不安を覚えたのだ。
それを払拭する素晴らしいフットワークだった。あれは、相当練習しているのではと、私は直感的にそう思った。それをカーブの投球を受けてからでも、焦らず確実に送球したところに価値があった。1軍と2軍の走者の違いは確かにあるが、あの動きとあの強肩ならば、1軍でもそうそう簡単に走られることはないだろう。むしろ、盗塁にしっかり備えて練習してきたであろう山瀬の技量に、ちょっとうれしくなった。
となると、なぜ左膝を地面につけるのか。その利点はどこにあるのか。捕球時の体のポジションがつらいから左膝をつける捕手がいる。かく言う私もそうだった。ついつい左膝をつけてしまったのは、股関節が硬かったこと、そこを柔らかくする鍛錬よりも、左膝をつける方が楽だったと言えば、正直過ぎるか。
ただ、膝をつけているから盗塁を刺せませんでした、では話にならない。私も左膝をつけてでも、素早く捕球から送球に移行できる動きを反復練習して身につけた。だから、そのことでのデメリットはそれほど感じなかった。そしてメリットとして考えられるのが、低めの投球へのキャッチングが考えられる。
この試合の先発は左腕だった。右打者の内角低めへのスライダーを山瀬はしっかり捕球していた。低めのキャッチングは難しく、自分のキャッチングが固まるまでは、どうしても捕球時にミットが下がる。下がると、球審の印象として、球筋が分かりづらくなり、ボールに判定される確率が上がってしまう。私はそう感じて、低めのボールをしっかりとめることに腐心してきた。
今はフレーミングを推奨する球団もあるが、本来は低めをしっかり捕球し、かつ球審にきちんとストライク、ボールをジャッジしてもらうことが大切だろう。その点で、この日の山瀬は左腕の低めのボールをしっかりとめていた。右腕の時にどうしているかは、今後の試合を見てまたリポートしたい。
また、ワンバウンド投球に対しても、ここでも練習の跡がうかがえる動きだった。左膝を素早く動かし、俊敏にワンバウンドに対応していた。つまり、山瀬が地面につけている左膝のデメリットは、この試合に限れば感じられなかった。
話は元に戻るが、山瀬がこうしてキャッチング、ブロッキング、スローイングに安定した力を発揮していることは、プラス材料だった。高卒7年目ともなると、選手によってはベテランの雰囲気を漂わせ始める捕手もいる。そうなると、ずっとファームにいて、いわゆるファーム慣れしてくる。そしてやや緊張感、必死さがぼやけてくる。そうなると、評価する側に選手の懸命さがストレートに伝わらなくなることもある。
その部分において、この日見た山瀬はなんの不安もなかった。ネット記事には、プライベートな部分が目につくが、ことグラウンドに限れば山瀬はしっかり緊張感を維持し、向上心をもって試合に入っていたと感じた。(日刊スポーツ評論家)





