＜全国高校野球選手権：智弁和歌山１５－３駒大岩見沢＞◇１３日◇３回戦

　甲子園に新たな怪物が現れた。智弁和歌山は主砲、坂口真規内野手（３年）が史上初の１イニング２本塁打を放ち、駒大岩見沢（北北海道）を１５－３で破った。１点を追う８回に中堅左へ逆転３ランと、打者一巡した第５打席で再び左翼席に運んだ。３番勝谷直紀主将（３年）も３ランを放ち、１イニング３発も史上初。強打で２年ぶりの８強進出を決めた。

　４万６０００人の大観衆がどよめく声を聞きながら、坂口が同じイニングで２周目のダイヤモンドを走る。ＰＬ学園清原も、星稜・松井も、大阪桐蔭・中田もできなかった史上初の１イニング２本塁打。１試合２発さえ自身初で「僕もびっくりしました」。歴史に名を刻んだ“新怪物”は、無邪気に笑った。

　１点を追う８回だった。無死一、二塁で巡ってきた第４打席。高めに浮いた初球の直球をたたくと、手応え十分の１発は、弾丸ライナーでバックスクリーン左へ。「たまたま当たったら飛んでいった」。この逆転弾で勢いづいた打線は止まらない。３番勝谷も３ランを放つなど一挙１０点。そして一巡して迎えた第５打席だ。今度は内角低めのスライダーをすくい上げ左翼ポール際へソロを運んだ。

　体は限界に近かった。６月に疲労骨折した右くるぶしには、何重もテーピングをしていた。試合前に痛み止めを飲むが「８、９回になると痛みが出る」と言う。それでもこの日は、勝利への執念が痛みを止めた。「痛みどうこうの問題じゃない。勝つことが大事。痛みは忘れてました」。県大会では、ケガの状態を案じた高嶋監督から「出るのは準決勝からでいい」と言われても「出してください」と懇願した。結局初戦から出場し４戦連発で貢献。最後の夏にかける思いは誰にも負けない。

　昨夏、仙台育英・佐藤由規（現ヤクルト）から１発を放ち脚光を浴びた。「負けたら終わりなんで。次も初心に戻って一生懸命頑張りたい」。目覚めた新怪物が、８年ぶりの日本一を見据えた。【木村有三】