二刀流での活躍にアメリカでも大きな注目を集まる大谷翔平投手のエンゼルス入団が明らかになった翌日、現地9日ジャンカルロ・スタントン外野手のマーリンズからヤンキースへのトレードが発表された。これまでくすぶってきた移籍の噂がやっと決着した形だ。ただこのトレードに関連したゴタゴタも起こっている。

 まず8日、スタントンのトレード失敗に関する声明を出したのがカージナルスだった。ビル・デウィット会長兼CEOは声明で「トレード拒否条項を破棄し、ジャンカルロ・スタントンを獲得することでマーリンズから合意を得た。(その後)彼がセントルイスに来るためトレード拒否条項を破棄する意志がないことを知らされた。彼の決定には失望しているが、来るシーズンに向けてクラブを改善するためのあらゆる努力を続けていく」と述べている。また、ジョン・モゼリアック社長は「これは彼にとって素晴らしい着地点だと思ったが、そうではなかった」と失望感を露わにした。

 トレードの破談はよくあることだが、こうした声明をチームが出すことはほとんどない。公式に発表するほど、トレード交渉に紆余曲折があり、怒りと悔しさを味わったことが窺える。

 一方で今回のトレード内容についての批判が両チーム、とりわけヤンキースのデレク・ジーター共同オーナー兼CEOに批判が出ている。

 今回、スタントンとの交換でヤンキースからはスターリン・カストロ内野手とマイナー2選手が移籍することとなった。カストロは今シーズン打率3割を記録するなど一線級の選手であり、マーリンズにとって期待できる選手だ。しかし2人のマイナー選手は高評価を受けているものの、もっと高い評価を受けている若手選手はおり、そうした選手を獲得できたのではというのがマーリンズに対する厳しい目である。

 対して、ジーターにも状況を吟味し、冷静な判断が出来ていればもっと好条件でスタントンを獲得できたのではという批判も出ている。スポーツ専門局ESPNなどは移籍交渉の電話会議でジーターがパニックになっていたと伝えた。スタントンが移籍を望むチームが判明し、もし移籍が不成立となったらマーリンズが契約の早期破棄ができる2020年まで移籍に応じないとスタントンに圧力をかけていたことなどを冷静に判断できていなかったというのである。

 さらに悪いことに現地11日にはこの日開幕したウインターミーティングを欠席しプロフットボールNFLの試合を観戦する様子がテレビ中継され、そのことでも批判が高まることとなった。ジーターは就任後の行動を疑問視する声がしばしばあっただけに今後火消しに追われそうである。

 今回のこうした騒動はスタントンがいかに大物かということの現れといえそうだ。