もっとも、打者と向き合えば、自然とギアは上がった。初回、11年MVPの3番ブラウンの4球目には、自己最速タイとなる95マイル(約153キロ)をマーク。3者凡退で滑り出した。2回表1死からソロ本塁打を浴びたものの、その後は6回まで無安打投球。危なげない内容で、味方打線の逆転劇を呼んだ。

 開幕直後こそ不安定な投球が続いた一方、中継ぎを経験したことで本来の攻撃的な投球に立ち返った。特に、球速だけでなく、キレの戻った速球を意図的に高めに投げ込むことで奥行きが加わった。日本では危険といわれる高めの速球も、ローボール打者の多いメジャーでは効果抜群。「低めの方が本塁打になる確率の高い打者がたくさんいる。振ってくれるような高さ、場所に投げなきゃいけない難しさはある。ただ、そこに投げられれば必ず空振りを取れると信じながら投げるので、正直、怖さはないですね」。思考、配球の適応と、本来の球威と制球がかみ合い、過去8戦は44回1/3で46Kと、奪三振ペースも着実にアップした。

 終わってみれば、被安打1の快勝劇に、ロバーツ監督も「マエケンはすごく良かった」と、ニックネームを交えつつ称賛した。シーズン終盤で下降気味だった1年目とは一転、右肩上がりで投げ続ける今季のマエケンは、ひと味もふた味も違う。【四竈衛】