エンゼルス大谷翔平投手(23)が、メジャー史に新たな1ページをしるした。打者出場した開幕戦に続き、敵地アスレチックス戦に先発登板。6回3安打3失点で初登板初勝利を飾った。開幕戦に打者でスタメン出場した選手が、10日以内に先発マウンドに上がるのは、1919年のベーブ・ルース以来(当時レッドソックス)。大志を抱いて野球の母国に乗り込んだ「二刀流」が、本格的に挑戦を開始した。

 大谷は3日前に立っていた旅立ちの場所を見下ろした。今度はマウンドから、力いっぱい投げ込んだ。歴史的な初登板を初勝利で飾った。「ここまできたんだなというよりは、始まったなっていう感じの方が強い」。開幕野手スタメンから10日以内に先発登板。99年前にベーブ・ルースがたどった軌跡を復活させた。「二刀流」のまま海を渡り、この日、本当の第1歩を踏み出した。

 圧倒的な存在感で、ダイヤモンドの中心にいた。初回に渡米後最速となる99・6マイル(約160キロ)をマーク。奪った6つの三振のうち、5つがキャンプで制球に苦しんだフォークだった。「そこ(フォーク)次第かなっていう部分はあった。(捕手の)マルドナド選手が、低めのボールを丁寧にしっかり止めてくれた」。日本時代から絶対的な決め球。幾多の修羅場をくぐり抜けた自身の武器を信じ、仲間を信じて腕を振った。2点の援護をもらった直後の2回に3ランを浴びた。「流れ的にすごくよくない。勝てる投球ではない」と反省したが、3回以降は被安打0。再逆転後の5、6回をともに3者凡退で切り抜けた。

 開幕前の実戦は5試合の登板すべてで失点。3月16日のロッキーズ戦は、2回途中7失点と無残なほどに打ち込まれた。MLB球やマウンドの傾斜への対応には、時間がかかった。生活面を含め、すべてが慣れない環境。部屋で目を覚ますと、いつも暗闇だった。2月の渡米前夜はライトゴロの夢を見たが、実は米国入り後も浅い眠りは続き、毎晩夜中に目が開いた。寝具にもこだわり、10代の頃から「睡眠は大事」と気を使ってきた大谷が、不眠に襲われた。「おそらくこの先のシーズンでも思い通りにいかないときは出てくる。そのときに何が悪かったのかっていうのを自分で分かっていれば、次につながる」。すべてを受け入れて、前に進んだ。

 今日2日(日本時間3日)からは本拠地エンゼルスタジアムでの開幕シリーズ。次は再び、打者としての出番が待っている。そして8日(同9日)にはアスレチックス戦で本拠地初先発の予定。「個人的にもチームとしても、いいスタートが切れた。次のカードが始まって相手も変わるので、しっかりと確かめながら、1打席1打席大事にいきたいなと思います」。初球初安打と初登板初勝利。メジャーファンは少しずつ、二刀流・大谷の魅力を知り始めている。【本間翼、斎藤庸裕】