連続写真で選手のフォームをひもとく「解体新書」。今季ここまで打者として打率2割5分6厘、20本塁打、57打点をマークしているエンゼルス大谷翔平投手(28)の打撃フォームを、日刊スポーツ評論家の和田一浩氏(50)が分析しました。

昨年、メジャーの本塁打のタイトル争いに加わった大谷。パワーがモノをいうタイトルを「もしかしたら日本人が獲得できるのでは」という夢を見させてもらった。ただ、人間とは強欲なもの。「今年こそは!」と期待してしまう。厳しくはなっているが、まだ後半戦が始まったばかり。昨年は前半戦で33発打っているだけに、可能性がなくなったわけではない。期待を込めて、今季の打撃を分析させてもらった。

この連続写真は、ブルージェイズの右腕ベリオスからの本塁打。133キロ低めのカーブを右中間に運んだ。この球種は球速が遅い。体のどこかのパーツを崩して打つため、完璧なフォームで打つのは難しい。大谷も(1)→(3)までは真っすぐを打つタイミング。(4)からカーブに対応するための動きに移っている。

ここで、左太ももの付け根付近を注目してほしい。(4)と(5)にかけて、右太ももの内側で「壁」を作り、球速の遅いカーブに対応しようとしている。しかし、左太ももの付け根にたまっていなければいけない力が、既に十分ではなくなってしまっている。

これは右投げ左打ちの特徴ともいえる。だが本来の大谷は、体の左側をもっとうまく使えていた。簡単に表現するなら「下半身のタメが浅い」ということ。並の打者なら、この時点でボールを待ちきれずに空振りか、バットの先に当たっての凡打だろう。しかし大谷は上半身を器用に使い、利き足でもある右足と上半身のパワーで対応している。

(5)では左肘を真下に落とすようにして「間」を作っている。めくれてしまいそうな下半身も、右足のパワーで食い止めている。だから(6)ではヘッドを捕手側に残せているし、(7)でもリストターンをさせずに球をすくい上げていける。(8)→(9)にかけても頭が突っ込まず、軸回転でボールを呼び込めて打てている。この打ち方ができるから本塁打にできる。だが逆に、この打ち方ができてしまうから、今季は本塁打数や打率が思うように上がっていかない要因にもなっていると思う。

(4)~(9)までの右スパイクの動きを見てもらいたい。インパクト前の(6)まで、つま先が閉じているのが分かるだろう。強烈な壁を作るためにつま先が閉じているのだが、窮屈になりすぎて、右膝を柔らかく使えなくなっている。

ここまでで、つま先を少し開いて踏み込めると、右膝は投手側に向かって柔らかく使える。そうやって右膝を使えれば、これほど窮屈な形にはならず、インパクトゾーンも長く引っ張ってこれる。もっと楽に、バットのヘッドを走らせることができるだろう。

足首が柔らかいため、(7)~(9)までで内側にひねるように使って、上半身を回転させている。これも常人ではまね出来ない動き。元々大谷の能力は、私ごときが計り知れないものがある。後半戦はどうやって対応していくのか、興味は尽きない。勉強させてもらうと同時に、楽しみにしている。(日刊スポーツ評論家)

<ア・リーグ本塁打ランキング>

<1>ジャッジ(ヤンキース) 37

<2>アルバレス(アストロズ) 28

<3>トラウト(エンゼルス) 24

<3>スタントン(ヤンキース)24

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<9>タイ 大谷翔平(エンゼルス) 20

※7月26日現在。20本は他に2人。