世界最高峰の舞台で世界一を目指す、日本の侍たち。日刊スポーツでは今季、ドジャース大谷翔平投手はもちろん、日本人メジャーリーガーと彼らにまつわるストーリーを「SAMURAI MLB」と題して、隔週火曜日で紹介する。海を渡って戦う日本人選手たちに、多角的に迫っていく。
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小谷正勝氏(80=日刊スポーツ客員評論家)が、ドジャース大谷翔平投手(31)の今季の投球フォームを分析した。佐々木主浩、三浦大輔、五十嵐亮太、内海哲也、山口鉄也ら数々の名投手を指導した名伯楽が、大谷の「まとめる力」を評価した。
■普通を普通にが一流
総合的に見て、勝負時に160キロ前後の球を投げ込んでくる投手に、投球フォーム自体にそんなに気になるところがあることは少ない。それも投打の二刀流をしながら、メジャーで2ケタ勝利を挙げた大谷であればなおさらである。正直に言うと、私が大谷のフォームを解説すること自体、はばかられるが、子どもたちのヒントになればという思いでやらせていただく。
いいピッチャーには必ず個性がある。投手を見た時に誰みたいなタイプですか? と聞かれる方がいるが、かつて、切磋琢磨(せっさたくま)した佐々木主浩や三浦大輔、内海哲也も、世に出た投手は独自の何かがある。コーチ時代、多くの投手と関わったが、大谷以上にパワーがある投手は見たことがなく、これこそが彼の個性であり、最大の武器である。
フォームを細かく見ていけば、(1)で軸足の右足のかかとが地面に着いてから左足を上げている。それによって、軸がしっかりして、(3)までの姿が真っすぐに保たれている。(1)で右足のかかとが浮けば、(3)のようにきれいに立てないし、フォームのバランスも崩れ、ズレが生じる。普通のことのように思われるかもしれないが、普通のことを普通にできるのが一流である。
■唯一気がかり(4)(5)は
実は、投手として実戦復帰する過程の中で唯一、気がかりだったのが(4)~(5)にかけて、右腰が落ちる時があることだった。右腰が落ちれば、腕が遅れてしまうので、リリースポイントにズレが生じ、左打者の外角高めに抜ける球が多くなるケースがある。それを腕や上半身で修正しようとすると、右肩や右肘に余計な負担がかかり、故障のリスクが上がる。
ただ、この連続写真を見る限りはその心配はなかった。(4)~(5)にかけて、右腰は落ちずに次への動作に移っている。特に、(6)、(7)はコーチの立場では言うことがない。投球の中で胸の張りが大事と言われるが、(6)で胸の張りをつくるための準備をし、(7)で胸を張って、しっかりと投げられている。この部分にフォーカスすれば、理想的なフォームだと言える。
(7)でしっかり胸を張って、トップの位置もつくれているので、(8)以降は特に言うことはなく、スムーズに投げられている。投手として、約1年10カ月も試合から離れ、1試合ごとに微調整しながらの投球だろうが、球速は160キロを超え、あれだけ多くの変化球も投げられるのだから、素晴らしいの一言に尽きる。
■プロでもできないを
大谷のフォームの特徴とも言えるが、個人的には下半身の硬さを感じるが、それが悪い方向に作用せずにうまくまとめられている。大谷のようにまとめる(調整する)技術がなければ、(4)~(7)のところでフォームが乱れる。理屈で説明するのは難しく、これは大谷に技術があるからできることで、これもいわゆる個性。うまくまとめるのが上手だから、理想的な胸の張りがつくれる。
現役時代、一般の方ができないことを普通にやるのがプロだと言われたが、大谷はプロでもできないことをやる。飛び抜けた能力、体の強さ、日々の努力など、凡人の私の想像をはるかに超える。先発ローテを回りながら、野手でほとんどの試合に出場。それも優勝争いするドジャースでするのだから、心身の疲労や重圧は相当だろうが、大谷だからそれも可能にする。(日刊スポーツ客員評論家)



