<マリナーズ2-1ツインズ>◇2日(日本時間3日)◇セーフコ・フィールド

 90年代最高の選手としてファンを魅了し続けたマリナーズのケン・グリフィー外野手(40)が2日、栄光の現役生活に終止符を打った。親友の引退発表当日、イチロー外野手(36)がサヨナラ打を放った。

 歓喜のエンディングは、まるでドラマの筋書きを締めくくるかのように劇的だった。1-1で迎えた延長10回2死一、二塁。イチローは左腕ミハレスにカウント2-2と追い込まれながらもファウルで粘る。11球目。外寄り低めのスライダーにバットを合わせると、打球は二塁ベース後方に砂上に描かれたグリフィーの背番号「24」の右端へ転がった。二塁手が倒れながらベースカバーに入った遊撃手へトスしたがセーフ。この間に二塁走者が本塁を駆け抜けた。

 「本当は24番のところを抜けていって欲しかったですけど、ま、最後は24番のところに飛んでいってね。いろんなことがよぎりましたよね」。重圧のかかる場面で何度も期待に応えてきたが、感情の高ぶりを抑えることはできなかった。「(09年WBC決勝の)最後の打席は、僕の野球人生で最も雑念の多かった打席と言いましたけど、その次に雑念の多い打席と言えるでしょうね。(右肩付近を示しながら)今日はずっとこのへんにジュニアがいましたよね」。

 試合前の発表で、気持ちが揺れていた。今季初の3三振。あまり吐露しない胸の内はこんな言葉になった。「そりゃ動揺はありますよ。僕だって一応人間ですから。でも(今日みたいなことは)ないです。あまりにも突然すぎて、整理もできないまま混乱した状態でゲームをずっとやってましたからね」。孤高という点で心の中には共通認識もあった。それだけに陽気なスーパースター、グリフィーの存在が孤独から解放してくれた。

 楽しそうにじゃれ合う姿は、ファンも知っている。ビデオ室では、後ろにいてくれた。親しみやすいキャラクターと実績に心を解したわけではない。「野球界のスーパースターなのに、人の気持ちを知ろうとするし、察しようとする。また人の心の痛みがよく分かる人だった」。選手として、人として偉大なグリフィーが去る日に、今季初のサヨナラ打。忘れられない、惜別の1本となった。(シアトル=木崎英夫通信員)