<マリナーズ7-4ジャイアンツ>◇16日(日本時間17日)◇セーフコフィールド

 マリナーズの岩隈久志投手(31)が、持ち味の制球力でメジャー初勝利を挙げた。今季11試合目の登板となった本拠地ジャイアンツ戦で、同点の6回から登板。2回無安打無失点の好投で打線の援護を呼び込み、チームの連敗を6で止めた。開幕から慣れないリリーフ起用に苦しんだが、登板を重ねるごとに投球が安定。四球を1つ出したものの、対戦した打者7人全員に初球ストライクだった。

 メジャー開幕から約2カ月半。岩隈が慣れない中継ぎで初勝利を挙げた。ロッカールームで同僚から祝福のビールを浴び「長かったのかもしれないが、とにかく1勝目というのはうれしい。家族がシアトルで一緒になって戦っていますんで、もうちょっと僕がしっかりして、一緒に喜びたいと思います」。家族も待ちに待ったウイニングボールを、父の日の前日にプレゼントできた。

 日本で抜群の精度を誇った制球力が戻ってきた。同点の6回から登板。走者なしでもセットポジションからの投球が安定した。「追いついた後なので、相手に流れがいかないように」と3者凡退で攻撃のリズムを呼び込むと、6回裏に味方が3得点。7回は2死から四球を与えたが、無安打2三振と危なげなく抑え、白星を手にした。対戦した7人全員に初球ストライクと持ち味を発揮した。

 日本を代表する先発投手にとって、中継ぎはプロ初登板の1試合だけ。それがメジャーでは先発機会を与えられず、敗戦処理、ワンポイントと、とにかく出番がいつくるか分からない。調整法に戸惑いながら「どんな場面でも、自分の役割を果たせるような準備をしたい」と繰り返す言葉は決まっている。昨年「絆」と刺しゅうしたグラブに、今年は「希望」の文字を入れた。決して腐らず、前向きな希望を持ち続け、新しい環境に適応しつつある。

 連敗を6で止める力投に、ウェッジ監督は「素晴らしい仕事だった。自信の投球で、今後同じような状況でも安心して任せられる」と信頼を寄せた。借金11で地区最下位に低迷するマ軍の先発陣はヘルナンデス、バルガス、ミルウッドまでは安定しているが、それ以外は不安要素が多く、付け入る隙は十分。「先発で勝利を挙げられたら、さらに素晴らしいことだと思う」と静かに“定位置”奪取を狙う岩隈が、チャンスをつかむ日はそう遠くない。

 ▼岩隈が大リーグで初勝利。大リーグで登板した日本人投手は通算35人おり、勝利を記録したのは30人目となった。岩隈は近鉄時代のプロ2年目、20歳でデビューした01年5月29日日本ハム戦(東京ドーム)で8番手として初登板初勝利をマーク。日本での救援登板はこの1試合しかなく、救援勝利はデビュー戦以来11年ぶりとなった。