挑戦者の同級2位・矢吹正道(32=LUSH緑)が3度のダウンを奪う9回TKOで938日ぶりの世界王座奪還を果たした。王者シベナティ・ノンシンガ(25=南アフリカ)と息詰まる主導権争いから8回終了間際に連打でダウンを奪い、9回も2度のダウンで1分50秒、レフェリーが試合を止めた。矢吹は今後、同級の防衛戦はしないと明言し階級を上げるか、世界王者のまま引退を示唆した。
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魂の連打が王者ノンシンガの心を打ち抜いた。8回終了間際に連打でダウンを奪った矢吹は、9回に勝負をかけた。1分過ぎに左フックから右ボディーでダウンを奪い、この時点で心折れた王者を1分50秒、3度目のダウンで仕留めた。
「難しい試合になると思っていた。負けたら引退を決めていた。結果を出せてよかった」。試合後のリング上に恭子夫人、長女の夢月さん、長男の克羽くんを上げて最高の記念ショットを収めた。「じーんときました」。世界王者に返り咲いた実感をかみしめた。
2022年3月19日、WBC王座の初防衛戦で寺地拳四朗(BMB)とのダイレクトリマッチに敗れてベルトを失った。昨年1月にIBF同級挑戦者決定戦を制して夢に近づいた、が、同年5月のスパーリング中に左アキレス腱(けん)断裂の重傷を負った。
この時、病院に運ばれる車中で現役を続けるかは「50-50だった」と明かす。何よりイヤだったのが手術。「注射もめっちゃ嫌いなくらい、痛いのは苦手なので手術か保存療法かの2択でした」。保存療法は手術より倍以上の治療期間を要する。迷っている矢吹を一喝したのが弟の力石政法だった。「負けてもないのに何を言うとるん。治して復帰せーや」。
めったにない弟の叱咤(しった)に奮起した。手術して半年かけての苦しいリハビリ。今月17日に大橋ジムへ移籍初戦を迎える力石が志願してセコンドについた。その目に兄の快挙を見せつけた。
今後は「この階級でやることはないですね」と言い放った。「試合前から考えていた。負ければもちろんだし、勝って世界王者のまま引退するのもありかなと。モチベーションとしては(WBO世界フライ級王者アンソニー・)オラスクアガ選手とやりたい。絶対打ち合いになるんで」。
938日ぶりに奪ったベルトに固執はしない。やんちゃをしまくった少年時代から2度の世界王者。夢物語の次章は自ら決める。【実藤健一】
◆矢吹正道(やぶき・まさみち) 本名・佐藤正道。「佐藤じゃつまらない」と不滅のボクシングマンガ“あしたのジョー”の主人公・矢吹丈からリングネームをもらった。1992年(平4)7月9日、三重県鈴鹿市生まれ。16年3月、2回TKO勝ちでプロデビュー。20年7月、日本ライトフライ級王座を獲得。21年9月にWBC世界ライトフライ級王座獲得も寺地と22年3月の再戦に敗れた。戦績は17勝(16KO)4敗。身長166センチの右ボクサーファイター。家族は恭子夫人と1女1男。

