私も政治家をした経験からよく理解できるが、政治家は人前で話すのが好きである。とくに森喜朗元内閣総理大臣は、観衆が多ければ多いほど調子がいい感じだった。日体大の入学式や卒業式には、幾度も喜んで出席してくださった。日体大の式典は、5000人がアリーナを埋める。森ブシが絶好調。

私は、なぜか森元総理とは縁があった。森先生の弟子、馳浩議員の先生が私という関係もあり、他党にいる私によく声をかけてくださった。大阪府知事選挙に漫才師の横山ノック参院議員が出馬表明したおり、自民党幹事長だった森先生より、私に対抗馬としての出馬要請があった。打診されたが、私は外交や安全保障と関係ない知事よりも代議士を選択した。

元早大ラガーで、イラクで殉死された奥克彦大使は、ロンドンで参事官だったおり、ラグビーW杯開催に合わせて国会議員のW杯を企画された。森先生から電話、「君が出ないでどうするんだ」。以来、すっかり森先生の子分になってしまった。元総理が自民党最大派閥の森派会長の時、小泉純一郎事務総長が私をスカウトに来た。しかし、私は二階俊博氏に師事していたので動かなかった。

本当は書くことが山ほどあるのだが、紙幅の関係で書けないのが残念。「失言王」と新聞に書かれていたけれど、本当は、東京オリパラ組織委員会会長のユーモアとサービス精神なのだが、ちょっとズレがあったようだ。五輪招致のために世界中を飛び回った苦労人の評価を「女性蔑視」の一言でアウトにする非情。世は残酷である。

森喜朗、川淵三郎の両氏は、共に日体大の名誉博士である。スポーツ界発展のためにご尽力された方々を顕彰しているが、大変喜ばれた。「母校の早稲田が評価してくれないのに、日体大が名誉学位を贈ってくれた」と感想をもらした森先生。とても印象的であった。

「オブジーボががんに効いたんだ。髪の毛だってフサフサになった」と笑顔の森先生。茶飲み話を公でするクセ、クスリはなかった。