このページの先頭



ここから共通メニュー

共通メニュー


ホーム > 芸能 > 映画大賞 > 石原裕次郎賞


第20回 日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞


石原裕次郎賞

「武士の一分」山田洋次監督

畳の上でリラックスする山田洋次監督
畳の上でリラックスする山田洋次監督

 石原裕次郎賞に選出されたのは公開から1年たってもまだ鮮烈な印象を残す「武士の一分」だ。山田洋次監督(76)の作品の同賞受賞は、96年「学校2」に続き2度目。裕次郎さんの名前が付いた賞に、日本映画の現状を重ねた感慨を持っている。助演男優賞も同映画の笹野高史(59)が受賞。主演男優賞の木村拓哉と合わせて、「武士の一分」は3冠を獲得した。

 作品賞でも監督賞でもなく、石原裕次郎賞。映画にとって幸福だったという時代に生きたスターの名前を冠した賞。丁寧に作って、大きなスクリーンで見てほしいというコンセプトもあった「武士-」。受賞は喜びだけではない。こだわってきた映画作りの手法が簡略化されていく映画界の現状を憂う気持ちも重ねた。

 「裕次郎という人は、撮影所を知っている人です。撮影所がない今、人材育成の問題があるし、スタッフの身分は本当に不安定。それに最近は予算を削るために、撮影から編集、ダビングまで、全部デジタルの世界になっている。観客もDVDをレンタルして見る。映画がモニターの中だけで終わって、矮小(わいしょう)化している。裕次郎さんに、今の日本映画の現状にどんな感想を持つのか聞いてみたい。良くないねという思いを共有したい」。

 一分とはメンツ、どうしても譲れないこと。山田監督の一分は何かと聞いてみると「おれが観客だったら、こんな映画を見たいという映画を作ること。観客だったらこんな映画は見たくないという映画は絶対に作らない、ってことさ」。余計なものをそぎ落とした一分。シンプルなことが、映画の現場から失われつつあるのかもしれない。

 藤沢周平作品には映画化したいものがまだある。今度は武士ではなく、江戸の長屋に住む職人を主人公にした作品だ。親に捨てられた子を引き取った夫婦の物語をかいつまんで語ってくれたが、それだけで映画館で見たい気持ちになった。スクリーンで見たい作品を作り続ける-。山田監督の一分だ。【小林千穂】

 [2007年12月5日 紙面から]

「武士の一分」
 三村新之丞(木村拓哉)は妻の加世(檀れい)、仲間の徳平(笹野高史)と幸せに暮らしていた。だが、藩主の毒味役を務め失明してから歯車が狂い始める。加世は番頭・島田のわなにはまり、新之丞は武士の一分をかけて復讐(ふくしゅう)を誓う。山田洋次監督。
山田洋次(やまだ・ようじ)
 1931年(昭6)9月13日、大阪府生まれ。東大卒業後、54年に松竹入社。61年「二階の他人」で監督デビュー。主な監督作は「男はつらいよ」シリーズ、「学校」シリーズのほか「幸福の黄色いハンカチ」「息子」など。藤沢周平作品「たそがれ清兵衛」「隠し剣 鬼の爪」はともにベルリン映画祭コンペ部門に出品され、「たそがれ-」はアカデミー賞外国語作品賞にもノミネート。
石原裕次郎賞・選考経過
 「武士の一分」と「クローズZERO」が支持された。クローズは「武士の世界に通じることを、男の子たちが学生服でやっていた」(神田)と評価されたが、「ワンカットワンカット、丁寧にとられていた」(梅沢氏)、「裕次郎さんの名前を冠した賞なら『武士-』がふさわしい」(逸見氏)などの意見が出て、「武士-」が圧勝。
作品賞&監督賞 「それでもボクはやってない」 周防正行監督
主演男優賞 木村拓哉「武士の一分」
主演女優賞 竹内結子「サイドカーに犬」
助演男優賞 笹野高史「武士の一分」
助演女優賞 樹木希林「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」
新人賞 新垣結衣「ワルボロ」「恋空」
外国作品賞 「硫黄島からの手紙」ワーナー・ブラザース
石原裕次郎賞 「武士の一分」山田洋次監督
石原裕次郎新人賞 該当者なし
ファン大賞 「HERO」「パイレーツ・オブ・カリビアン ワールドエンド」
功労賞 北野武監督、鈴木京香


このページの先頭へ