都道府県の魅力度ランキングで6年連続最下位の茨城県がこのほど、東京・銀座に斬新なアンテナショップをオープンした。その名も「IBARAKI sense(イバラキセンス)」。ショップには厳選した県産の食品や工芸品が並び、おしゃれなレストランやカフェも併設されている。コンセプトは「茨城のセンスを世界に発信する上質なストア」。最下位脱出へ、茨城の“本気”が伝わってきた。
取材した日、店の前で中年女性2人が立ち話をしていた。「新しいお店ね。どこかのブランドショップ?」「えーと、イバラキって書いてある」「イバラキって、あのイバラキ!?」。ゴールドと黒を基調にしたガラス張りの外観は、まるで高級ブランドショップのよう。女性たちは驚いて、店の中に入っていった。
この「IBARAKI sense」は10月25日、銀座1丁目にリニューアルオープンした。3月までは「茨城マルシェ」として営業していたが、昨年当選した大井川和彦知事が「高級店が並ぶ銀座で話題になるような店に」と提案したこともあり、アンテナショップとは思えないハイセンスな店に生まれ変わった。
原田暢(のぼる)店長(50)は「以前は1000点以上の品ぞろえがありましたが、今回はぐっと厳選して、茨城の逸品を集めました。ぜひ都会の方々に知っていただければ思います」と話した。
店内は茨城県の地形や産地に合わせてレイアウトされている。色とりどりの笠間焼のつぼ、水府提灯、八溝杉のレリーフなど、各所に茨城の名産品が飾られている。原田店長によると、今の時期のショップのお薦めは、大子町のリンゴ「紅玉」を使った手作りアップルパイ(ハーフで税込み1296円)だという。
レストラン「BARA dining」にはプロジェクションマッピングが設置され、袋田の滝、筑波山、国営ひたち海浜公園などの映像が、名産の稲田石を使った壁面に次々と映し出される。茨城の食材をふんだんに使ったランチやディナーを楽しみながら、茨城の名所の四季の映像をたっぷり見ることができる。
「BARA cafe」では、「茨城産笠間マロンソフト」が今の時期の1番人気だという。テークアウトもできる。レストランとカフェの名前にあるバラは、茨城の県花だ。
オープンから1カ月以上がたったが、お客さんからの反響は予想以上に大きいという。「茨城の食といえば納豆、干し芋などのイメージが強いのですが、『こんなおいしいものがあったんだ』というお客さまの声もいただいています」(原田店長)。
都道府県の魅力度ランキングで6年連続最下位の茨城県だが、「IBARAKI sense」が、そのイメージを覆すことができるのか。原田店長は「調査結果は真摯(しんし)に受け止めつつ、それに振り回されないで茨城の魅力をきっちりと発信していきたいですね」と力を込める。
名前の通り「センス」にあふれた店内を歩いていると、ここが茨城のアンテナショップだということを忘れてしまいそう。冷蔵コーナーに控えめに並んだ納豆のパッケージを見て、少しホッとしたような気分になった。【田口辰男】
◆都道府県魅力度ランキング2018 ブランド総合研究所が10月に発表した。1位は10年連続で北海道、2位京都府、3位東京都、4位沖縄県と続く。一方、茨城県が6年連続最下位47位で、徳島県は2年連続46位。栃木県と佐賀県が同ポイントで44位だった。
◆IBARAKI sense(イバラキセンス)東京都中央区銀座1の2の1紺屋ビル1階、【電話】03・5524・0818。営業時間はショップとBARA cafeは午前10時30分~午後8時、BARA diningは午前11時~午後11時(日曜・祝日は午後9時まで)。