令和初の国政選挙となる参院選が、4日に公示される。日刊スポーツでは今日から、選挙戦をめぐるさまざまな動きを「令和元年 夏の陣」と題し、お伝えしていく。今回は、第1次安倍政権の退陣につながった12年前の参院選と同じ、「亥(い)年選挙」の参院選。ここにきて安倍晋三首相の「エレベーター発言」が、波紋を広げ始めた。各党党首の舌戦も本格化、公示前最後の日曜日となった6月30日はネット党首討論会も行われた。

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通常国会終盤に「老後2000万円問題」が表面化。選挙戦はこの問題で野党が攻め、自民党が守る構図が予想されている。そこに新たな「テーマ」を投げ掛けたのは、ほかならぬ安倍首相だった。

首相は大阪市でG20が開幕した先月28日夜、各国首脳を招いた夕食会のあいさつで、大阪城の復元を紹介した際、エレベーターが設置されたことを「1つだけ大きなミスを犯した」と指摘した。障がいがある人や高齢者への配慮に欠く発言で、作家の乙武洋匡氏はツイッターで「とっても悲しい気持ちになる」と指摘。インターネット上でも批判が広がり、思わぬ形で飛び出した「失言」が、自民党に暗い影を落とし始めた。

自民党は今年5月、参院選を視野に「失言防止マニュアル」を発表したばかりだ。関係者は「もし笑いを取ろうとしたのなら最悪だ。首脳からも反応はなかったと聞く。首相は選挙前に発言の意図を説明しなければならない」と指摘した。

野党側は攻勢を強める。立憲民主党の枝野幸男代表は30日、党の決起集会や街頭演説でこの問題に言及。「ミスだというセンスと感覚は、まったく理解できない」とした上で「今のご時世で、バリアフリーは当たり前。体が不自由な人たちにちゃんと目を向けていない表れだ」と批判。「困っている人の立場で社会を組み立てることで、みんなが幸せになる。多様性、違いを力にする社会にしなければ」と、訴えた。国民民主党の玉木雄一郎代表も、盛岡市で「不適切だ。来年の東京オリンピック(五輪)・パラリンピックを控え、言葉を選ぶべきだった」と指摘した。

首相は「エレベーター発言」の真意を、どう説明するのか。選挙に向けて、避けては通れない。【中山知子】