今週から開幕する夏の新潟開催の名物重賞アイビスSD(G3、芝直線1000メートル、31日=新潟)は、史上初となる「JRA女性騎手重賞対決」が注目される。藤田菜七子騎手(24=根本)は昨年のこのレース以来1年ぶりの重賞参戦でスティクス(牝4、武幸)に騎乗。今春は栗東滞在で新たな環境に身を置き、自分を磨いた。得意の“千直”で存在感を示したい。すでに重賞制覇を果たしているルーキー今村聖奈騎手(18=寺島)はオヌシナニモノ(牡5、高橋忠)で挑む。

    ◇    ◇    ◇  

今年3月からしばらく栗東に拠点を移していた藤田騎手は、今村騎手のデビュー時の様子を間近で見ていた。「ちょうど栗東に行ったころにデビューしていたので、自分のデビュー当時を思い出しましたね。(今村騎手は)当時からしっかりしている印象でした」。初々しく、ひた向きに努力する姿を自分と重ね、こう振り返る。

6つ下の後輩は、その後、新人トップをひた走り、CBC賞では重賞初騎乗Vも達成。女性騎手として多くの記録を打ち立ててきた藤田騎手も「聖奈ちゃんは重賞も勝って勢いがあってすごいと思います」と、その活躍ぶりには目を細める。それでもレースではライバル同士。昨年のアイビスSD以来、1年ぶりの重賞騎乗となる今回は「私も負けないように頑張りたいです」と闘志を燃やす。

直線競馬には一日の長がある。全143勝のうち10勝を挙げる得意舞台。自身がデビューした16年以降では、全騎手の中でも単独トップの勝利数を誇る。「直線1000メートルの中でもタメを作るということが必要だと思っています。前に行きたいけど行くだけでは千直は持たないので」。スピードを生かしながらも息を入れる合間を作ってあげる。それを念頭に置き意識することで勝利を積み重ねてきた。コンビを組むスティクスには初騎乗となるが「ゲートがすごく上手な馬で前向きな馬だと思います」と長所は分析済みだ。

環境を大きく変えて競馬と向き合った栗東滞在は大きな財産になったという。「技術面であったりいろいろなことを勉強する機会をいただき、もっと変わらないととも思いました。いろいろなことが勉強できたと思います」。女性ジョッキー対決として注目される一戦。だが、それとは関係なく、その経験を生かして結果で示したい。【井上力心】

◆藤田菜七子騎手のJRA重賞 通算33戦1勝。23戦目だった19年12月カペラS(G3)のコパノキッキング(2番人気)で日本人女性騎手として史上初の重賞勝利を挙げた。同馬とのコンビでは同年10月大井の東京盃(Jpn2)で女性騎手史上初のダートグレード競走勝利も飾っている。アイビスSDは4年連続4度目の参戦でこれまでは9、10、13着。

◆“千直”の勝利数上位騎手 現役で2桁勝利を挙げているのは藤田菜七子騎手(10勝)を含めて12人で、トップは25勝の柴田善臣騎手。引退騎手では中舘英二(25勝)、村田一誠(22勝)、西田雄一郎(21勝)が20勝超え(現在は3人とも調教師)。