現地時間27日にロサンゼルスのドルビー劇場で行われた第94回アカデミー賞授賞式で、ウィル・スミスがクリス・ロックにビンタを食らわせた事件は世界中に中継され、大騒動に発展していますが、リアクションが日米で少し違うように感じています。何が起きたのかはすでに大々的に報じられているのでここでは省略しますが、主演男優賞候補だったスターが生放送中に起こした前代未聞のビンタ騒動は、ハリウッドのみならず世界中の映画ファンに大きな衝撃を与え、賛否両論さまざまな意見がネットに投稿されています。
そのリアクションを見ていると、アメリカでは何があっても暴力は許せないという意見が多くみられる一方、日本では他人の容姿、ましてや脱毛症に苦しんでいる人をネタにしたロックが悪いと非難し、「妻を守るためにやった」とスミスを擁護する意見が多く見受けられ、アメリカでの受け止め方とは温度差があるような印象を受けます。コメディアンであっても言って良いジョークと悪いジョークはありますが、トップスターが世界中に生中継されていることを承知の上でステージに無言で乱入してビンタする行為はやはりあるまじきものだというのが、多くのアメリカ人の反応です。本人が公表しているとは言え、クリス本人からコメントがない以上、脱毛症を患っていたことを認識していたのかは不明で、「これが許されたらコメディアンはジョークを言うたびに誰かにたたかれることを心配しなければならない」「反論があるなら暴力ではなく、言葉でするべき」と、こちらでは一線を越えたスミスに対する批判がどちらかというと多い印象です。CNNのアンカーも言葉ではなく暴力を使ったと番組で公然と批判し、このような現状の中でこのニュースを伝えることが恥ずかしいと述べるなどメディアもスミスに対して厳しい意見を述べています。
さらに、ビンタ騒動後もスミスは何事もなかったかのように最前列の席に座り続け、主演男優賞を受賞して涙ながらにスピーチしたことに違和感を持った人も少なくありません。この点に関しては、俳優ジム・キャリーやアーノルド・シュワルツェネッガーの元妻でジャーナリストのマリア・シュライバーさんをはじめ多くの著名人が批判しており、司会者の一人ワンダ・サイクスはトーク番組で「誰かが暴力を振るえば、建物の外にエスコートされて追い出されるだけのこと。それをしなかったことはとても不快だった」と語っています。
文化や価値観の違いもあり、アメリカではむしろスミスの行為は「犯罪」だと見る人も少なくなく、キャリーは「逮捕されるべきだった」とはっきり述べています。主催する米映画芸術科学アカデミーは、条例や行動規範、カリフォルニア州法に従ってスミスに対する措置を検討すると発表しており、アカデミー追放など厳しい懲戒処分が下される可能性も出ています。また、ロサンゼルス市警察が授賞式終了直後に「事件を認識しているが、被害者が被害届を出すことを拒否しているため正式な捜査が行われることはない」と声明を出したことからも、アメリカではこれは事件であると認識されていることが分かります。
どちらに非があるのかはもちろんアメリカ国内でも意見が割れており、共に半々くらいではないかと思いますが、男性の方が女性よりスミスが悪いと考える人が多く、年代別にみると若い人ほどロックが悪いと思っているという調査結果も発表されています。業界内でも、ラッパーのニッキー・ミナージュや歌手リアム・ペインがスミスの行動に理解を示していますが、「全世界で中継されている番組で映画スターが誰かを殴り、その直後に愛についてスピーチしてスタンディングオベーションされる様子を座ってみるようなことはあってはいけない」(シュライバー)「ただのジョーク。ジョークはクリス・ロックの仕事」(女優ミア・ファロー)「ジョークが受け流せないなら、家にいるべき」(コメディアンのキャサリン・ライアン)「まだショックを受け、あぜんとし、悲しんでいる。この不快な気持ちが私たち全員が目撃したものから消えるのを待っています」(司会を務めたエイミー・シューマー)など、たくさんのセレブが理由はともあれ暴力は認められるべきではないと意見しています。
(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)






