東京湾にマゴチ釣りの季節がやってきた。横浜・鶴見「新明丸」では連日、近場周辺や大貫沖に釣行している。生きたサイマキエビをスズキ針に掛けて泳がせる釣り方の元祖。40センチの平均サイズをはじめ、「モンスター」と呼ばれる60センチ超級も飛び出している。過去5~6年は数、型ともに好調が続いており、今年もその状態をキープしている。夏の太陽がジリジリと照り付ける季節になれば、旬を迎える。タナ(魚の遊泳層)をしっかり取って、エサもこまめに交換すれば、必ず食ってくる。

モンスターが海面を割って出現した。右ミヨシ6人目、泉貴義さん(39=東京都北区)のサオが絞り込まれる。新明慶樹船長(40)のタモに収まったのは、61センチのマゴチ。オオサンショウウオと見間違えるかのような、大貫沖の主だった。

「何年もかけて多くの釣り宿が対象魚としている東京湾では、60センチオーバーならモンスターと呼んでいいですよ」(新明船長)。

午前11時30分ごろ、干潮から満潮へと、潮が動きだした。まさに「潮時」。チャンス到来とばかりに、船内のあちらこちらでアタリが出始めた。

「アタリが出てから20秒ほど待ち、手元で獲物の重みを感じながら、サイマキエビを食い込んで十分サオがしなった段階で大きく合わせた」という泉さん。次に57センチも連釣した。

開始直後からここまでは食いの渋い状態が続いた。「鋳込みテンビンが着底したら1メートルほど巻き、まめにシャクって誘う。5秒ほどしたらタナを取り直し、また誘う。基本に忠実にやっていました」。我慢の末、最終的に5匹も確保した。

初挑戦組も、確実に食わせた。地元横浜市在住で、右大ドモで初挑戦の関達矢さん(28)とその手前の中村幸樹さん(28)だ。ヒラメ釣りの経験がある中村さんは、100ほど数えて「もう上げていいだろう」と思い切り食わせた。前々からやってみたいと思っていた関さんは、「つつかれているのではないかくらいの、かすかなアタリで合わせたら食った」と言う。

右胴の間では、木村亮太さん(30)彩花さん(30)夫妻も仲良く40センチ級の平均サイズをゲット。「根掛かりと思ったら右に持って行かれた」(亮太さん)「エサを替えてすぐにつつき始め、10秒くらいで合わせた」(彩花さん)。帰りの船内では夕食の献立の相談もしていた。

「こまめなタナ取りと、動く物に反応するマゴチを食わせるため、エビエサを弱らせないように大事に扱い、元気なエビを絶えず針に掛けることが、この釣りの基本です」(新明船長)。

サオ先が揺れた後、何度か引き込まれたら、マゴチがエビを食い始めている。あとは、針に掛かったタイミングを逃さず、サオを大きくシャクるだけ。どこかで来るチャンスは、逃さない。【赤塚辰浩】

▼船宿 新明丸【電話】090・4600・1225。電話予約制。マゴチはサイマキ5匹付き、マダコはエサ付き、フグ(エサ別)で、いずれも9500円、出船7時30分。追加のサイマキは、船内で1匹100円で販売。氷を船宿で1個100円で購入。少なくともマゴチの体高の半分ほどの海水をクーラーに入れておくかタグを付けて船内のイケスへ。釣れたマゴチは帰港後、船長が「神経締め」してくれる。針をのまれたらハリスを長めに切って生かしておく。

なお、コロナ対策として、船の定員を制限するほか、乗船時にはマスクなどを着用。船内客室は荷物置き場とする。

<野島、南房では磯からも釣れる>

関東の防波堤などでもマゴチは釣れる。横浜・野島「村本海事」では、ハナレ、青灯など、どこでも狙えるという。「潮が動いている側に仕掛けを投入し、砂地と岩盤地帯の境目や、海底に起伏のある岩場、ヨブ(潮の流れなどによって海底にできたヒダ状の溝)などを丹念に探ってください」(関口真一店主=57)。釣り方は3通り。スピンテールなどのルアー、20グラムのジグヘッドと10~15センチのワームの組み合わせ、あとはハゼやシロギスなどを泳がせる。【電話】045・781・8736。渡船は朝7時と正午。半日(午前、午後のどちらか)3000円、1日(朝から午後4時沖上がりまで)4000円。

千葉・南房「マリンスポット釣吉」では、館山観光桟橋や、富浦港から多田良海岸側などで30~50メートルなどルアーを投げ、カケアガリ周辺の底スレスレをゆっくり探る。シンキングペンシル、シンキングミノー、バイブレーション、14グラムのメタルジグなどが有効だ。「エサとなる小魚が豊富で、今がチャンス」(横溝健次店主=70)。【電話】0470・33・2880。

<鹿島ではルアーで>

茨城・鹿島「第三幸栄丸」では、ルアーで狙う。30~40グラムのジグヘッドと3~4・5インチ(約7・5~11・3センチ)のワームで誘う。フルキャストして底付近を引きずって広く探ったり、船下を小突く。「潮温が安定しており、活性もまずまず。ワームの色はオレンジが定番ですが、ピンク、黒などいろいろと用意しておくといいでしょう」(荒原康宏船長=33)。9月あたりまで楽しめるという。

▼第三幸栄丸【電話】0299・82・6032。4時受付、1万1000円。