元モデルの歯学博士・照山裕子さんが、口臭が気になる、歯周病が進んできた…歯と口の悩みなど、皆さんの悩みに回答します。

 Q インプラントを勧める先生と勧めない先生がいるのはなぜですか。

 A インプラントはスクリュー形のチタンの人工歯根を骨に埋め込む治療法です。チタンは生体になじみ、最もアレルギーを起こしにくい金属で、3カ月ほどで骨と結合します。手術は、歯茎をメスで開き、骨にドリルで穴をあけて人工歯根を埋めます。1度閉じ、3カ月後、歯茎を再び切開し、差し歯をしていくイメージです。前歯などは見た目の問題もあるため、埋めた当日に差し歯をつける即時荷重という方法もありますが、リスクが高まります。

 ブリッジのように他の歯に負担をかけないインプラントは、成功率も95%以上と自費治療では最も高い治療法ですが、患者の骨の質、年齢、体質、生活習慣によって差が出ます。喫煙者や口のケアができない人は、インプラントの残存率が低く、勧められませんし、女性の場合、骨粗しょう症で骨がスカスカだと、インプラントは定着しません。

 私が大学を卒業した15年前、インプラントはまだポピュラーな治療法ではなく、インプラントの授業もありませんでした。私の場合、大学病院に勤めている時に勉強することができましたが、習っていない治療法を開業医になってから一から勉強するのは大変です。休みの日をすべて1回10万円単位のお金がかかる勉強会にあて、時間とお金をかけて技術を学ばなければいけません。

 虫歯を削るのとはわけが違って、習っていない先生には抵抗があるでしょうし、インプラントにはタッチしないという先生がいてもおかしくありません。30代、40代の先生はインプラントはやって当たり前ですが、60代以上はやらない先生が多いだろうと思います。ただ、インプラントは、適した患者に対して行えば、成功率が極めて高いことはどの先生も分かっています。自分はやらないが、インプラント専門医を紹介したり、クリニックにインプラント専門医を月に何回か呼ぶ先生は多くなっていると思います。

 ◆照山裕子(てるやま・ゆうこ) 歯学博士。厚労省歯科医師臨床研修指導医。歯と全身の関わりについて幅広く学んだ経験を基に、機能面だけでなく審美的要素にもこだわった丁寧な治療がモットー。分かりやすい解説でテレビ、ラジオにも多数出演している。学生時代はモデル事務所に所属。近著に「歯科医が考案 毒出しうがい」(アスコム)。