元モデルの歯学博士・照山裕子さんが、口臭が気になる、歯周病が進んできた…歯と口の悩みなど、皆さんの悩みに回答します。

 Q インプラントの値段は安くなるのでしょうか。

 インプラントの治療費は都内の平均で1本35万~40万円と言われています。

 メーカーによって違いますが、骨に埋め込むインプラント本体は1本数万円します。直径4・3ミリ、長さ8ミリとか直径3・5ミリ、長さ13ミリとか、サイズは大変細かく分かれていて、手術前にCT(コンピューター断層撮影)を使って顎の骨の構造を3次元的に解析し、シミュレーションをして最も合った物を選ぶのですが、実際に切開してみたら骨が軟らかかったり、やせていたり、別のサイズの物でないとダメな場合があります。ひとつの症例に対し、予備で3、4種類のインプラントをそろえておかなければならないこともあり、その分コストがかかります。

 インプラント専門のクリニックならば、在庫をそろえ、仮に1日3人の患者がいたとしてもその中でうまく対応することができますが、そうでない場合、使用期限のあるインプラントを抱えておくのはリスクがあります。35万~40万円はそんな事情から出てきた価格です。

 インプラントの価格は安くなりますかという質問ですが、自由診療ですからクリニックによる価格差はあります。インプラントを希望する患者さんや系列の分院が多いクリニックであれば一括大量購入してコストを抑えることが可能かもしれません。インプラントは、歯科医の手技による差があります。これまで1例しかやったことがないという先生はいるでしょうし、一方で年間数千本を処置するという先生もいます。しかし、1本の値段は、前者が40万円で、後者が21万円だったりもします。クリニックの経営状況、インプラントの管理、インプラント治療に対する各歯科医の考え方等も複雑に絡んで、単純に「高いから良い、安いから悪い」ではなくなっています。

 価格はあってないようなもの。患者の骨の状態、生活習慣、咬み合せの癖や周りの歯とのバランスを見て処置できる経験豊富な先生を探してください。

 ◆照山裕子(てるやま・ゆうこ) 歯学博士。厚労省歯科医師臨床研修指導医。歯と全身の関わりについて幅広く学んだ経験を基に、機能面だけでなく審美的要素にもこだわった丁寧な治療がモットー。分かりやすい解説でテレビ、ラジオにも多数出演している。学生時代はモデル事務所に所属。近著に「歯科医が考案 毒出しうがい」(アスコム)。