元モデルの歯学博士・照山裕子さんが、口臭が気になる、歯周病が進んできた…歯と口の悩みなど、皆さんの悩みに回答します。

 Q 虫歯はないと思うのですが、歯がしみます。知覚過敏でしょうか。

 A 知覚過敏とは、何らかの原因で歯の表面が削れ、冷たい飲み物や歯ブラシの毛先が触れた時に鋭い痛みを感じる症状を指します。主な原因は、磨き過ぎや歯ぎしり、歯の咬み合わせです。酸蝕(さんしょく)症といって、(1)過食、拒食などで嘔吐(おうと)を繰り返す(2)レモンやミカンなどかんきつ系の果物を好んで食べる-などの習慣がある人がなることもあります。

 歯周病や加齢で歯肉が下がると、歯を支える根と歯の境目(厚みがなく、くびれている部分)が出てきます。この部分は歯髄(歯の神経)までの距離が近く、最もしみやすい場所です。硬い歯ブラシをゴシゴシと強く当てるような磨き方をしていると、あっという間に表面のエナメル質やセメント質が削れ、外部の刺激が象牙質を通して歯髄に届くようになります。歯ぎしりで過度な力が加わった場合もここが割れたり剥がれたりし、磨き過ぎと同じように欠けてしまいます。

 治療方法は削れ具合や症状によっても変わってきます。磨き過ぎの場合はまずブラッシング圧を下げること。軟らかいブラシで優しく磨く習慣に変えてください。粗い研磨剤が入った歯磨き粉はもちろん厳禁で、シュミテクトなど知覚過敏防止効果のある歯磨き粉を使います。ある程度持続性のある、しみ止め防止のコーティング剤を歯科医院で塗ってもらうこともできますし、痛みのある部分にレーザー照射を行うこともあります。

 一度欠けた部分は自然に回復しませんので、削れ具合が大きい場合やコーティング等で症状の改善が見られない場合は、レジンやセメントといった歯科材料で塞ぎます。咬み合わせに問題があると考えられる方には、睡眠中の無意識な歯ぎしりや食いしばりから歯を守るためマウスピースを装着してもらいます。

 それでも症状が改善せず、どうしても痛みが抑えられない場合は歯髄を取らなくてはなりません。感覚がなくなるため楽にはなりますが、歯髄をとるデメリットも当然ありますので、歯科医院での処置は段階を経て慎重に行うのが一般的です。

 ◆照山裕子(てるやま・ゆうこ) 歯学博士。厚労省歯科医師臨床研修指導医。歯と全身の関わりについて幅広く学んだ経験を基に、機能面だけでなく審美的要素にもこだわった丁寧な治療がモットー。分かりやすい解説でテレビ、ラジオにも多数出演している。学生時代はモデル事務所に所属。近著に「歯科医が考案 毒出しうがい」(アスコム)。