元モデルの歯学博士・照山裕子さんが、口臭が気になる、歯周病が進んできた…歯と口の悩みなど、皆さんの悩みに回答します。

 Q 子どもの親知らずですが、真っすぐ生えているようです。そのままにしておいていいでしょうか。

 A 永久歯(大人の歯)は上下左右7本ずつ、計28本あります。永久歯は大体15歳前後で生えそろいますが、その後10代後半から8番目に生えてくる歯を智歯(親知らず)と呼んでいます。親知らずの本数には個人差があり、1本だけの人もいれば、4本すべて生える人、全く生えてこない人、さまざまです。

親知らずの多くは歯ブラシが届きにくい場所にあるため不潔になりやすく、しばしば歯肉が腫れたり、気づかない間に大きな虫歯ができていたりすることがあり、注意が必要です。

歯列に沿って真っすぐ生えており、上下の親知らずがしっかりかみ合っており、セルフケアがちゃんとできる人であれば抜かなくても良いと思います。しかしそのようなケースは稀で、親知らずによって手前の歯が押され、歯並びが乱れる原因になることがあります。また、親知らずが虫歯や歯周病になることで、大事にしなければいけない手前の歯までダメにするリスクも多いです。

 特に下顎の場合は親知らずが真っすぐに生えてくることは極めて少なく、斜めに生えたり、真横に生えてくることがほとんどです。昔話に出てくる『こぶ取りじいさん』は、実は親知らずが腫れた人だったという話を耳にしたことがありますが、炎症がひどくなるとまさにあの姿になってしまいます。歯ぐきに埋まっているから大丈夫と安心せず、定期的なチェックを受けてもらった方が無難です。

 下顎の親知らずは大事な神経に近い場所に埋まっていることが多いため、CT(コンピューター断層撮影)で得られた三次元的な画像を見ながら抜歯することで、より正確で迅速な処置が可能になりました。症例によっては保険適用になります。

上顎の場合は下顎に比べて真っすぐ生えてくる確率が高いですが、親知らずに歯ブラシを当てること自体が大変難しく虫歯になりやすいです。処置は比較的短時間で済むことが多いので、抜歯を検討している方は上顎からチャレンジしてみるのもおすすめです。

 親知らずを保存しておけば、手前の歯がダメになった際に移植したり、ブリッジや入れ歯の支台に使えることは事実ですので、綺麗な状態で生えている方は大事にしておいてくださいね。

 ◆照山裕子(てるやま・ゆうこ) 歯学博士。厚労省歯科医師臨床研修指導医。歯と全身の関わりについて幅広く学んだ経験を基に、機能面だけでなく審美的要素にもこだわった丁寧な治療がモットー。分かりやすい解説でテレビ、ラジオにも多数出演している。学生時代はモデル事務所に所属。近著に「歯科医が考案 毒出しうがい」(アスコム)。