元モデルの歯学博士・照山裕子さんが、口臭が気になる、歯周病が進んできた…歯と口の悩みなど、皆さんの悩みに回答します。

Q 歯肉が黒ずんできたのですが…。

A 歯肉黒ずみの原因は、大きく2つあります。1つはたばこ。タールやニコチンと言った有害物質から歯肉を守るためにメラニン色素が作られ沈着します。人体に有害な紫外線を浴びると皮膚にメラニン色素が沈着してシミになるのと同じ仕組みで、ターンオーバーが追いついていれば、メラニン色素が排出され沈着しないのですが、崩れた場合は黒ずみになります。タール自体が付着したり、ニコチンの影響で血流が悪くなることでも、歯肉の色は暗くなります。たばこの場合、喫煙者本人だけでなく、受動喫煙でも黒ずみが生じると報告されています。

もう1つは差し歯などかぶせ物の周りの歯肉が黒くなる、歯科用金属による色素沈着です。

すでにかぶせてある歯に使われた金属が腐食して溶けだしたり、歯の支台に使われる銀合金などを削って新しいかぶせ物を作る途中で出た金属片が歯肉に沈着し、黒ずみを起こすことがあります。メタルタトゥー(金属の入れ墨)と呼ばれています。

 たばこが原因の場合は、歯肉のピーリングが効果的です。肌のピーリングをするのと同じように、歯肉の表面に薬剤を塗布します。メラニン色素の多い部分に反応して一時的に歯肉が真っ白になりますが、3、4日してはがれ落ちると、ピンク色の新しい歯肉が再生されます。保険が利かない自由診療なので、クリニックにより価格差がありますが、相場は5000~1万円くらいでしょうか。ピーリングは本当にきれいになりますが、たばこを吸い続ければ当然また黒くなります。

 金属による色素沈着の場合は、歯肉を外科的に切除して取るしかありません。今かぶせてある金属が原因であれば、同時に金属を取り換える必要もあります。ただ、症例によっては歯質が薄く、強度が低下していることがあるので、慎重な治療が必要です。特に土台になっている銀合金を取り換えるときは、その振動で歯が割れないよう細心の注意を払います。

汚染された歯質を取り除き、前処置をきちんと行った上で黒ずまない土台(ファイバーコア等)に交換し、かぶせ物も金属ではなくセラミック系にすることで解消されます

 ◆照山裕子(てるやま・ゆうこ) 歯学博士。厚労省歯科医師臨床研修指導医。歯と全身の関わりについて幅広く学んだ経験を基に、機能面だけでなく審美的要素にもこだわった丁寧な治療がモットー。分かりやすい解説でテレビ、ラジオにも多数出演している。学生時代はモデル事務所に所属。近著に「歯科医が考案 毒出しうがい」(アスコム)。