元モデルの歯学博士・照山裕子さんが、口臭が気になる、歯周病が進んできた…歯と口の悩みなど、皆さんの悩みに回答します。

 Q 第1子を妊娠しました。注意しなくてはいけないことを教えて下さい。

 A 一般には、妊娠すると歯肉炎にかかりやすくなるといわれています。血中の女性ホルモン(エストロゲン)を好んで増殖する歯周病菌がいること、胎盤の発育とともに増えるプロゲステロンが炎症反応を加速させることを含め、さまざまなホルモンの影響で妊娠中は歯周組織に炎症が起きやすく、進行しやすい状態が約10カ月続きます。ただし、基本的にはプラーク(歯垢=しこう)がない清潔なお口の中では歯周疾患は起きませんし、生じたとしても軽度で済みます。「妊娠中は普段よりもプラークコントロールに気をつける」ということをまず頭に入れておいてください。

妊娠すると、ホルモンの変化で唾液の分泌量も減り、お口が渇きやすくなります。唾液にはお口の中を正常に保つ働きがあるため、分泌が低下すると、それだけで虫歯や歯周病のリスクが高まります。妊娠初期、つわりで歯ブラシを口に入れるのも大変という方は、1日のうちに体調の良い時間を見計らってチャレンジしてください。ヘッドが小さめのものを使用し、前かがみの姿勢でなるべく舌に触らないように動かすと、気持ち悪さが軽減します。味や香料の刺激が強いものは避け、毛先は歯肉を目がけて小刻みに動かしましょう。

妊娠中期になると、一度に食べられる量が減り、間食が増える妊婦さんが多いようです。理想的には食事ごとのケアですが、難しいようであれば、お水でしっかり口をゆすぐだけでも効果があります。デンタルチェックをこまめに受け、大きなトラブルが起きないように気をつけましょう。生まれてくる赤ちゃんの歯胚(歯の元)は妊娠初期から作られ、4カ月ごろに硬くなってきます。必要な栄養素が取れるよう、バランスの良い食事も心がけたいこところです。

妊娠後期になると、前述したプロゲステロンが月経時の10~30倍になるとされています。ここで恐いのが、歯周病に罹患している妊婦さんでは2500グラム未満の低体重児、妊娠37週未満の早産のリスクがぐんと高くなることです。低体重児、早産の原因として喫煙、飲酒などが挙げられますが、それよりはるかに高い数字です。

 妊娠中の歯科治療には制限があります。そして出産後は育児に追われ、一番自由が利かなくなります。授乳しているので薬も飲みたくない、出産後1年半くらい経過しないと通院できないという方が大半です。こういった観点から、女性は若い世代から歯周病について関心を持ち、適切な治療や口腔衛生指導を受けてもらうと安心だと思います。

 ◆照山裕子(てるやま・ゆうこ) 歯学博士。厚労省歯科医師臨床研修指導医。歯と全身の関わりについて幅広く学んだ経験を基に、機能面だけでなく審美的要素にもこだわった丁寧な治療がモットー。分かりやすい解説でテレビ、ラジオにも多数出演している。学生時代はモデル事務所に所属。近著に「歯科医が考案 毒出しうがい」(アスコム)。