今日から、エイズ治療の大家で日本のリーダー的存在、国立国際医療研究センター「エイズ治療・研究開発センター」岡慎一センター長への特別インタビューです。昨年1年間の国内での新規HIV(エイズウイルス)感染者は1003人。新規エイズ患者は437人(エイズ動向委員会より)。性的接触が8割以上を占め、同性と性行為をもつ男性の感染者が多い。

 -最近の動きについて教えてほしい

 岡氏 HIV感染、エイズは先進国では患者数が激減している。いまや薬を飲んで予防ができるまでになっているからだ。いま、世界の合言葉は「次世代にエイズを残さない」である。

 -日本の現状は?

 岡氏 日本では毎年新たに1500人ほどの新規感染者(エイズ患者を含む)が出ている。そのため累積患者はどんどん増えてしまっている。

 -なぜそうなる?

 岡氏 治療薬の進歩で、いまやエイズで死ぬことはなくなった。エイズを発症する前に見つかってきちんと治療を受ければ普通の生活が送れるが、HIVに感染していることを知らない人がまだ多くいる。

 -課題は何か

 岡氏 エイズで死ぬことはなくなっても患者が増えると医療費がかさむ。日本は公的制度のおかげで個人負担は少なくて済むが、国の負担は大きくなるばかりだ。20代、30代で感染したとして、その後40年間治療をすると、1人約1億円かかる。これが毎年1500人ずつ増えているからいずれ限界がくる。

 -対策は?

 岡氏 やはり検査で発見することが大切。検査で感染がわかった人はラッキーだ。見つかっても決して残念なことではない。“エイズ発症前にわかったのだから、むしろ良かった”である。(続く)