<心疾患の基本検査>

 「心疾患の基本検査として胸部エックス線検査も重要です」-。このように聞くと「えー、肺がんの間違いでしょう」と思う人が多いのではないでしょうか。肺炎、肺結核、肺がんの早期発見、診断には欠かせない検査です。その一方で、心疾患の診断にも不可欠な検査なのです。

 胸部エックス線検査では心臓の大きさが分かります。私たちは肺の大きさと比較し、心臓の大きさをチェックします。比較することで確実に心臓の異変に気付きます。心臓に肥大があると、何らかの原因で心臓に負荷がかかっていることが分かります。「心臓弁膜症」でも心臓は肥大しますし、「心筋梗塞」があって心不全状態にあると、やはり心臓は肥大します。

 また、心臓から血液が押し出されると、大動脈を通って全身に流れて行きます。その胸の大動脈での怖い疾患としては、「胸部大動脈瘤(りゅう)」があります。これも、胸部エックス線検査で分かります。胸部大動脈瘤があると大動脈が少し太くなっているようだったり、幅広く写ったりします。

 大動脈が太く写っているのみならず、患者さんが「背中が痛い!」と言う症状を訴えられるようであれば、これは緊急を要します。この場合は、循環器内科からすぐに心臓血管外科に患者さんは回され、すぐに「胸・腹部CT(コンピューター断層撮影)検査」を行って状況を把握し、対応することになります。(取材・構成=医学ジャーナリスト松井宏夫)

 ◆胸部大動脈瘤 血液は心臓の左心室から送り出され、大動脈を通って全身に運ばれます。まずは上行大動脈で上昇し、180度カーブしている弓部大動脈を通過。そして、下行大動脈、腹部大動脈と流れて行きます。この上行・弓部・下行大動脈に瘤ができるのが胸部大動脈瘤です。破裂すると“突然死”に-。